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2018年7月30日 (月)

世尊(バカボン)と吉祥天    

『短歌往来』(ながらみ書房)2018年8月号の巻頭作品に、高野公彦さんの

「鰥・寡・孤・独」21首が掲載されている。

高野さんの歌はいつも啓発されるものがあるのだけど、今回はまたまた

その語彙力というか、造語に魅了された。


       媼ゐて優先席に眠りゐる若き世尊(バカボン)を眠らせて佇つ

 


優先席に眠っているのは、若い人、男性  ?   

はたで見ていても癪に障るのだけど、高野さんはあからさまに「このバカ」

とは、仰らない。「世尊(バカボン)」ときた。「このバカ」より、きつ〜い

怒りの人称のようでもある。


     向かうから歩きスマホのだんまりの吉祥天が来たので避(よ)ける




駅のホームなどで、放送しているけど「歩きスマホ」は、他人に迷惑を

かけるし、本人だって危ない。きっと妙齢の女性だったのだろう。

高野さんは女性に甘い(笑)。「吉祥天」と名付けるとは。

吉祥天といえば、衆生(しゅじょう)に福徳を与えるものなのに……


高野さんは自身のことをどのように名告るのかといえば、

     水面を裏より突(つつ)きしんしんと目高泳げり鰥夫(やもを)のほとり

     怒りやすしまた泣きやすし忘れやすし茫としやすし翁童(をうどう)

     われは


夫を亡くした人や、自分のことを「寡婦」ということばでうたった作品は

稀にあるが、妻を亡くした男性は自分のことを「鰥夫(やもを)」とは、なかなか

うたわない。(うたえないのか ?  )

「翁童(をうどう)」 は、造語かしら。




そういえば、『歌壇』(本阿弥書店)8月号の「定綱が訊く ぶっかり

インタビュ|ー」で、高野さんが語っていたことを思い出した。

             死んだ言葉を生かす

     (略)死んでいる言葉ですから辞書の中にしかないけれど、それを

      短歌の中で生かして使うと、少なくとも歌人たちが読んでくれる

      可能性があって、…(略)





佐佐木定綱さんのインタビューでは、「雀隠(すずめがく)れ」や「日(ひ)の

辻休(つじやす)み」が話題になっている。

かように言葉に執するというか、「死蔵されている言葉をぼくが引っ張り出

して、生かして使って、うまくいけばそれがリレーされていく。」と、日本語を

見据えている。




ところで、

島田修三さんの1ページエッセイにも触れたかったけど、時間切れ。

機会があればお手にとって、読んでください。

タイトルは、「或る受賞式」。

      (略)かくして人も私も老いてゆく。若い人たち、ご迷惑をおかけ

      すると思うけれども、まあ、君たちも、いずれそうなるんだぜ。

 

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