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2018年8月14日 (火)

『真夜中の子供』 辻 仁成    河出書房新社

博多、中洲を舞台に無戸籍児の2005年4月より2019年7月

までの成長物語。

蓮司は、クラブ勤めの母・あかねと、同居するホストの正数と

中洲で暮らしている。

母は夜の勤めなので、蓮司は夜になると中洲を出歩く。

「夜中に子供がふらふらしちゃあいけんとよ」と警官に補導されても、

5歳の蓮司は「みんな優しか人たちばかりやけん、大丈夫と」と答える。

「中洲の人たち、お巡りさんが言うような悪か人ばかりじゃなか」。




母親のあかねからネグレクトされ、正数からは暴力を受けている。

親が出生届けを出していないものだから、無戸籍になってしまい、

義務教育さえ受けることが出来ない。

(児童養護施設に入る段階までいかないのは、たてまえとして親と同居

していることもあるし、何より戸籍がないものだから、役所の手続きから

零れてしまうのだろう。)


中洲育ちの緋真(ひさな)との出会い。緋真は小学校に行っているが、

以後12年間、緋真は蓮司のために食べ物を届けたり、風邪をひけば

看病した。「なんで緋真はそんなにしてくれると ?」 「緋真はどうしてそんなに

優しいと ? 」 。


無戸籍児、ネグレクト、暴力と、社会的なテーマを孕む本書だが、

中洲全域のMAP を 巻頭に掲げているように、著者、辻仁成の博多・中洲を

こよなく愛している思いが伝わってくる。


なかでも博多祇園山笠の描写は迫力がある。



      中洲は生きている、と思った。この世界は何か人智の及ばぬ

      すさまじい霊力によって支配され、動かされているのだとわかった。

      「オイサッ、オイサッ ! 」

      「オイサッ、オイサッ ! 」


2019年7月、19歳になった蓮司。

蓮司の身の上を通り過ぎていったさまざまなこと(この、さまざまなことが

本書の圧巻ともいえる。アクシデントあり、事件あり、ほのぼのとした

エピソードありで、本書を読めば堪能できる。)が、あった。


      自分には戸籍を取得する意思がありません。自分は誰に

      望まれて生まれてきたわけでもありません。しかし、自分の

      ことを愛してくれた人々が中洲にいます。出院したら中洲に戻り、

      中洲の外には出ず、今まで通りそこで中洲の人々と中洲の

      伝統を守って暮らしていきたいと思っています。


                                   2018年6月30日 初版発行

                                                 1600円+税


      

旅に携えた250ページの大冊だったが、読みだしたら、止められ

ないほどだった。

辻仁成のパッションの籠る1冊であった。

映画化されるらしいので、待ち遠しい。



PM  7:25     真っ赤な夕焼け

        たましいを連れて行かれるような夕焼けを見たので、

        『現代短歌』9月号の「歌人の俳句」の句を紹介。


            大夕焼け金目のものは置いてゆく    石川美南

            ゆふ焼けやひとすぢうねる銀のみち   江田浩司






PM  8:15      金星と繊い月が並んで輝いている。

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