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2018年9月11日 (火)

歌集『冒険者たち』 ユキノ進  書肆侃侃房

『短歌』9月号の「歌集歌書を読む」で取り上げた歌集ながら、

印象深かったので、本日の「陽だまり短歌会」のテキストに使った。


この会の男性は3名揃ってリタイア組なので、どうかなぁと思いつつも

いやリタイア組だからこそ、距離を置いて醒めた眼で読んでくれるかも

知れないと期待しつつ。



     今すぐに飛んで行きますとクレームの電話を切って翼を捜す

     往来で携帯越しに詫びているおれを誰かがビルから見ている

     なだらかな坂のぼり切れば海が見える少し遅れて波音がする

     左岸から右岸に通う右岸から左岸に帰るひと日が終わる

     タクシーがみえなくなるまでお辞儀するおれの背中に風が吹いてる

     ゴーグルを着けたまんまで姉弟は素麺を食べるプールの午後に

     九階のベランダ越しの三人の影が大きく手を振っている

     それはもう愛だよ、愛とか言いながらお湯割りの梅をぐずぐず崩す

     ストラップの色で身分が分けられて中本さんは派遣のみどり

     船乗りになりたかったな。コピー機が灯台のようにひかりを送る



いずれの歌もわかりやすい。

作者の訴えたいことがすんなり読み手に届く。

たぶん、誤読する余地のないように表現されている。

1首目、2首目などは、ドラマのワンシーンとでもいえそうな切り取り方だ。

1首目の「翼を捜す」なんて、ふつうは表現しないよね。(評者Aの声)

     「だから、そこがいいとも言える」(評者Bの声)

2首目は、刑事の張り込みの場面を連想したり…

      視線を感じて、ふと上を見ると、「誰かが見ている」

5首目もドラマなどでよくあるシーン。深々とお辞儀をして得意先の人や

   おエライさんを見送るんだよね。


3首目の「少し遅れて波音がする」は、うまいなぁと思う。

     そう思いつつ、なんだか既視感もある。たとえば花火の音とか、

     カミナリの音とか「少し遅れて」って、つかいがち ?


皆さんが反応したのは、9首目。

     そうなんですよ。病院などでも色わけしているんですよ、と言う(評者 C )

    名札を色分けしていたり…

     昔は看護婦さんで婦長の帽子などは線が多かった。(評者 D)

      しかしなぁ、派遣とか出向とか色分けされたら、たまらん(笑)(評者 E)




いやはや喧々諤々。(なんて、冗談です。わたしの一人芝居。)

わたしは、4首目のような極めてオーソドックスな歌が好き。

作者の言いたいことが、直截的でなく、よくよく読めば伝わってくるような。

サラリーマンの悲哀 ?  は、むしろこんな何気ないところに醸し出されている。


家族をうたった6首目、7首目。

実にいい。とてもいい。

やっぱり、家族を愛する歌はいい。


「自分の会ったことのない遠い誰か、未来の読者の心に届くといいな、」と

あとがきに書いていたけど、ほら、現にこうして会ったこともない、わたしや

わたしの歌仲間に届きましたよ。「未来の読者」では、ないけど。

                           1700円+税

                           2018年4月16日 第一刷発行

 


cat     cat

このところ毎夕、ゆうがおの花が咲く。

二つ、三つと、ゆんわり開いていくのを見ているのは楽しい。


そして、朝顔の花が終わってしまったと思っていたのに、9月に入って

大きな花が毎朝開く。その朝顔を毎朝、激写している。

ピンク色に白い筋の入った「曜白朝顔」。

あまりに見事なので、誰かれ構わず送りつける。(困ったものだ。)


明日は某所に取材。

たのしみだけど、今週も3日続けてお出掛け。

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