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2018年9月17日 (月)

歌集 『谿泉』  玉井 清弘    角川書店

前歌集『屋嶋』にて、詩歌文学館賞と迢空賞を受賞した玉井清弘さんの

第九歌集。

玉井さんといえば「四国遍路のひと」というイメージである。

このたびの歌集では、四国八十八ヶ所歩き遍路の三度目にかかっていた

時期とか。三度目に挑戦している。そしてその三度目を結願。

四度目を歩き始めている。


わたしの受講生にも「歩き遍路」をしている人がいる。リピーターの一人

でもある。従ってそのかたの作る歌は遍路の歌が多い。

それはともかく玉井さんの歌を紹介したい。


     剪定に切られし枝に咲ける桐ほしくてならず遍路の途中

     若きらの働きている午後三時ごめんと言いてわれは晩酌

     ごみなるか服のほつれかわからねばひっぱりて見つずるずると糸

     白雲木咲けるを見よと呼びくれき その人逝きて季節また来ぬ

     おんかかかび唱えてめくれと言われたり地蔵菩薩の前掛けめくる

     頭(ず)の近く目白とびかいその上を山鳩のゆきその上みさご

     握りたる手塩の味のもどりくるおにぎりひらく萩のもとにて

     早口にしゃべりいるとき伊予弁のついとこぼれぬ風土の力

     梅雨どきの淡竹のうまし根元よく穂先もよろし酒の肴に

     ぷくぷくのうがいできるに〇つけぬ出来ぬ日そこに来ているらしい



もっともっと上げたい歌が多い。

歩き遍路の醍醐味にどっぷりつかりながらの日々。


1首目では、遍路の途中では桐の花を持っては歩けまい。

2首目は、羨ましいような午後三時を過ごしている。(「ごめん」では

      すまないな。(笑))

3首目、なんとも可笑しい。

4首目の「白雲木」は、エゴの花に似ている白い花。満開の時、

    遠くから見ると、白雲のように見えることから命名されたらしい。

5首目の「おんかかかび」は、お地蔵さまに真言で呼びかける時の言葉。

    この歌の詞書「紅葉の候にと残していた札所を巡拝し、四国八十

    八ヶ所歩き遍路三度目結願。」と記されている。

7首目、結句の「萩のもとにて」がいい。

8首目、まさに「風土の力」。わたしも此処、博多に50年以上暮らすとついつい

     博多弁が出てしまうのも「風土の力」かな。

9首目、「淡竹」は旨い。酒の肴になんて、いいねぇ。

     本歌集には、お酒の銘柄もあれやこれやと出てくるし、こんな

     暮らしが出来るのも健康あってのもの。

10首目、「ぷくぷくのうがい」ができるのも丈夫な歯があればこそ。



集中、後期高齢者なんていう歌もあったようだが、とてもいい暮らしかたを

している。だから、歌が澄んでいる。

『谿泉(けいせん)』 とは、谷間からわき出る水のこと。

その水のような一集であった。

そういえば、玉井さんは新仮名遣い。

これもこだわりがあるのだと思う。

この歌集は、ゼッタイ「歩き遍路」のKさんにに読んで貰いたい。


                           2600円+税

                           2018年9月14日 初版発行

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