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2018年11月14日 (水)

「壊れた自我の補助具」 上野千鶴子  朝日新聞

朝日新聞の2018年11月11日の「うたをよむ」は、上野千鶴子さんが

執筆していた。

その中で印象深かったのは、岡井隆さんから言われたひとこと、

「上野さん、あなたはきっと帰ってくる‥‥」

この意味することは、短歌の世界に戻ってくるということだ。

上野さんは、その言葉を「岡井の呪い」などと、茶目っ気たっぷりに書いて

いるが、岡井さんは今迄数多くの「帰ってきたひとたち」を知っているから

でもあろう。


短歌ってほんとうに不思議だ。

一度その「毒と蜜(笑)」を吸ってしまうと、忘れたつもりでも、ある日ふと

その味のことが思い出される。そして、〈原点〉に立ち戻ったりする。

良かれ悪しかれ、そんな摩訶不思議なものを秘めているのが三十一文字の

定型ともいえる。

上野さんは故・鶴見和子さんの例をあげながら、若い頃佐佐木信綱に師事

して学んだ短歌を晩年になって再開した鶴見さんのことを書いている。


      半世紀死火山なりしを轟きて煙くゆらす歌の火の山   鶴見和子




      認知症ケアで有名な故小澤勲医師が、自分たちのやっている

      ことは 「自我の補助具」を提供することだと言う。老眼には

      眼鏡が、難聴には、補聴器がある。それなら認知症によって

      壊れた自我にも、補助具があってもよい。   

                                上野千鶴子の文より


上野さんの講演 ?  を一度聴講したことがある。

もう、30年以上も前のことかも知れない。福岡市の城南市民センターだった。

データーを駆使しての講義で、上野さんのブレーン ?  の方々が生き生きと

補佐をしていた。わたしはと言えば、内心そんなデーターの話ばっかりでは

つまらん ! などと、生意気にも思っていたのだ。



上野さんはそのご、あれよあれよというまに立派な学者さんになられた

みたいだ。

そうして、このたびの「うたをよむ」を拝読して、上野さんの上に過ぎた歳月、

そして、わたしの上に過ぎた年月を思ったりした。






上野さん、良い文章を読ませていただきました。

短歌が「壊れた自我の補助具」になってほしい。

自我を支える強力な補助具になるだろう‥‥と、思いたいです。



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