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2018年12月 8日 (土)

『林立』 花山 周子   本阿弥書店

歌集の文字が一つも入っていない表紙。

そして、カバーも帯も付いていない、いたって簡素 ? な体裁となっている。

本文は二行書きで309首と長歌を収める第3歌集。


この2行書きスタイルにこのところわたしは憧れている。

2行書きだと、読むのに急がないような気がするのは錯覚か ?



           「身体のしんそこまで冷えること。そういう感じの寒さ。」底冷え

     放り出されてしまったようなわがからだ冬の日差しを吸って軽いな

     杉の根の軟弱さなど思いつつポケットに手を入れてバス待つ

     かの懐かしき電信柱は杉なりき明治の都市に林立したり

     大量の花粉揺さぶり吐く杉の往生際は極めて悪し

     雌日芝(めひしば)が露で光っている道に風が渡って露ちらしたり

     簡単に手は放されて手は泣けり生きているのが厭だと泣けり

     梨のつぶてのかなしみの梨手に持ちて十月四日の朝は明けたり

     ともだちが捨ててゆきたるレシートを財布にしまう確定申告のため

     がらんどうに冬が来ている屋上に蒲団かつぎて蒲団を干さん



花山さんの歌は、何かしら気にかかる。

何かしら訴えてくるものがある。

本歌集には「杉」に関わる歌が多いのだが、それは「塔」で作品連載の

機会があり、「杉」を題材にしたことを「あとがき」に記している。


それは、ともあれ、改めて花山さんの年齢を年鑑で調べたのは、若い女性

でもない、さりとて、中年でもない、したたかさ(良い意味での)があると

思ったのだ。地に足が着いているみたいな、手ごたえとでも言おうか。



1首目、きのう今日の寒さから、やはり選んでしまった。

2首目、解放感が伝わってくる。

3首目、杉の根は弱いため、杉山は土砂崩れが多いとか。下の句の作者の

     動作の具体が良い。

4首目、歌集題の「林立」の入った歌でもある。

5首目、まさにスギ花粉は「往生際は極めて悪し」ですな。

6首目、こういう嘱目をサラリと詠める力量。

7首目、かなしい歌。背後のことはわからないが、兎も角かなしい。

     せつない歌である。

8首目、「十月四日」が生きている。ということは10月3日に何かあったのだ。

     眠れないまま朝を迎えたのだと思ったのだが…

9首目、税務署さん、これは虚構ですから。(笑)

     だけど、この歌、愉しい。こういう発想ができる柔軟さが良い。

10首目、「蒲団かつぎて蒲団を干さん」なんて表現は、若い女性だと

      避けるんじゃないだろうか。だから、面白いとも言える。生活の歌。


10首選びながら、もっと違った視点で選ぶという方法もあったと思う。

一読した時のわたしの目に止まった歌、とでも言おうか。

 

                            2018年12月1日 第Ⅰ刷

                               2200円+税

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