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2019年1月 5日 (土)

『あさげゆふげ』 馬場あき子歌集 短歌研究社

旧年の12月28日のこのブログで「椿山抄」までの歌を紹介した。

従って本日は「別れ」の章より掉尾までの歌を。

この「別れ」の章には、詞書が添えられている。


       ー平成二十九年十一月三日、岩田正急逝ー

   ふたりゐてその一人ふと死にたれば検死の現場となるわが部屋は

   腰ぬけるほどに重たき死を抱へ引きずりしこのわが手うたがふ

   夫(つま)のきみ死にてゐし風呂に今宵入る六十年を越えて夫婦たりにし

   深き皺ひとつ増えたり夫の死後三日の朝の鏡に見たり

   亡き人はまこと無きなり新しき年は来るともまこと亡きなり

   墓などに入れなくてよいといふであらう本質はさびしがりやだつたあなた

   亡きひとよしんしんとろりゆつくりと眠つてください雪の夜です

   何待つとなけれ待つとは思ひなれ待ちえてけさはまひまひに会ふ

   衛星のごとく互(かたみ)にありたるをきみ流星となりて飛びゆく

   死なうと思つた恋もなけれど死んだふりの恋さらになし凡(ぼん)

   なりしかな


「短歌」2018年2月号は「追悼特集 岩田正」だった。

同号に馬場さんは、追悼20首を寄せている。タイトルは「別れ」。

その20首中の最後が5首目の歌である。

昨年のお正月、馬場さんの慟哭ともいえる「亡き人はまこと無きなり」を

かみしめていたのだろう。

今年のお正月も「亡き人はまこと無きなり」と呟いていたかもしれない。






10首目は「短歌」2018年5月号掲載歌の新作50首「衛星のごとく」中の1首。

この歌、わたしは初読の時から好きで好きで「短歌往来」2018年7月号で

下記のように綴った。

  死なうと思つた恋もなけれど死んだふりの恋さらになし凡(ぼん)なりしかな

                     馬場あき子「短歌」二〇一八年五月号

   結句の「凡(ぼん)なりしかな」のほろにがさ。そして多少の矜持もこもる。

   「夫婦つて別れないことが愛だよ」とも、馬場あき子はうたっている。


2首目の「六十年を越えて夫婦たりにし」の歌の上の句。

同じ状況になった時、わたしにできるかと自問してみる。

自信がない……


25年の歳月と、60年の歳月の違い、それだけではないだろう。

性根の据わりかたが違うのだ、きっと。


           ことしのモットーは「高齢者の歌に学ぶ」。

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