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2019年2月12日 (火)

「山下翔詠草集 7」

4回目のキャラバンの集大成である。

2018年9月2日から9月9日までのキャラバン、合計300首の歌が

収められている。

 

       福岡ー仙台ー東北本線ー両毛線ー伊勢崎ー前橋ー

       高崎ー大宮ー渋谷ー神保町ー鎌倉ー江の島ー熱海ー

       静岡ー名駅ー平和園ー黒壁ー彦根ー近江八幡ー天満橋


それぞれ連作とエッセイのかたちがとられている。

エッセイもよそゆきの言葉 ?  でなく、普段のままの文体に好感がもてる。

山下さんの歌は、凄い巧さといったものではなく、こうした連作形式によって

よりその作品に味わいが出るように思う。


     水風呂にみづの芯あるごときかな秋のはじめの旅のあしたは

     『温泉』は苦しい歌集と言はれたり苦しいところが現実ならむ

     夏のをはりの冷製パスタ山芋とオクラと蛸がよくからみあふ

     根拠のない自信をどうにかしたはうがいいと言はれつさうなのかなあ

     注文するまへに来る水、おしぼりとコーンポタージュ有無を言はさず

     きみはもう歩きはじめてゐるころか横顔ばかりがおもひ出されて

     うつすらと夕方が来て鳶なけり近ごろ口笛が吹けるやうになつた

     名を呼べばそこにはりつく感情のうるさいなあ秋は雲と行かうよ

     会ひたかれども会ひえざる人われになし会ひたいといふより

     しがみつきたい

     旅の夜の果ての大阪ぬれながらみづに芯ある秋とおもへり



巻頭の歌で「みづの芯」を出し、掉尾の歌で「みづに芯」をもってきたところ

など、構成的にはかなり練られている。しかし、言い様によっては〈作為的〉

でもある。無理に辻褄を合わせなくてもいいような  ?  ?




2首目、どなたの言葉か知らないが「苦しい歌集」は、褒め言葉とも言えよう。

     作者にとっては「苦しいところが現実」なのだから。




3首目、「冷製」なのかしら。「冷し中華」とは言うけれど「冷製中華」とは

     言わない筈。 メニューに書いてあったのだろうか。要するに

     「冷しパスタ」 ?  なのかな。



4首目の「根拠のない自信」には、笑った。こういう発想の出来るひとは

    スゴイ。そして、その言葉を直接山下さんに発するのだから、これは

    真の友人として登録した方がいい。(笑)


5首目は、3首目と同様に食物(テレビ的には消え物)をうたうと俄然、歌に

    生彩が。これは山下さんの独壇場ともいえる。


8首目の「うるさいなあ」は、4首目の「さうなのかなあ」と同様に独語であろう。

    それが効を奏している。


9首目の「しがみつきたい」なんて言われると、泣きたくなる。ホントは

    「しがみつく」の用法は、人や地位などから離れまいとする〈負〉の

    場合に使われることが多いように思うのだが、山下さんがつかうと

    なんだかせつないなぁ。どなたにしがみつきたいのやら(笑)







と、勝手な感想を述べて申し訳ない。

山下さんって、多作なんだ。

こんなにひょいひょい歌が出来るとは……

 

                       組版・装幀  山階 基

                          2019年1月25日

                           頒価 1500円

 

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