« 「山下翔詠草集 7」 | トップページ | 「〈短歌+映像〉北九州近代の記憶」 北九州市立文学館 »

2019年2月14日 (木)

『祭り太鼓はにぎやかに』 坪 裕 歌集  短歌研究社

歌歴40年の著者の遅すぎた第一歌集。

「多摩川のほとりに住んで、もう三十六年になる。(略)」のあとがきの

書き出し、竹内忠夫先生と著者の本名が非常に似ているために、

ペンネーム〈坪 裕(つぼ・ゆう)〉を使用。

平成24年から平成30年までの8年間に作った作品を収めている。

「香蘭」会員。


     祭礼のような日を生き悔いはなし祭り太鼓はにぎやかに打て

     世渡りの上手な奴とは付き合わぬと決めたがそいつは出世をしたり

     西行が願ったように花の頃ピンピンコロリと逝かせてくれよ

     寂しさを放っておけぬ時もある見えない星座を夜空に探す

     すれ違うときに激しく吠えられたそんなに怪しい男か俺は

     ラ・フランスが青白い貌で売られいる似たような奴一人知ってる

     朱の色に染まる朝焼け冷えびえと私を責めるように広がる

     安部でなく阿部でもなくて安倍さんが危ない橋を渡ろうとする

     切り傷を心にひとつ作らせてあいつは知らぬ顔して去りぬ

     百年もせっせと生きるわが母はわれも吾が名も忘れ果てたり

 

〈人生観〉のくきやかに出ている第一歌集である。

2首目、9首目を読むと「同類相憐れむ」といったわが思い ? も浮かんでくる。

4首目の「見えない星座を夜空に探す」のも、わが分身のごときおひとよ。

読んでいて、とても共感する

共感しながら「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とも、案じられもする。


面白さを狙うと、狙ったことが読者にそこはかとなく伝わる。

そのへんが危ういところか。

しかし、この『祭り太鼓はにぎやかに』の精神には、大いに肩入れしたくなる。

〈人生処方箋〉なんてことが思い浮かぶ一集であった。






                              帯文 千々和久幸

                              平成31年1月20日

                                 2500円+税

 

 

« 「山下翔詠草集 7」 | トップページ | 「〈短歌+映像〉北九州近代の記憶」 北九州市立文学館 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『祭り太鼓はにぎやかに』 坪 裕 歌集  短歌研究社:

« 「山下翔詠草集 7」 | トップページ | 「〈短歌+映像〉北九州近代の記憶」 北九州市立文学館 »