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2019年2月 6日 (水)

『猫の客』 平出 隆  河出文庫

隣家に住む猫のチビ。

その旧家の離れに住んでいる主人公夫妻。

そのチビが〈客〉として離れに遊びに来るようになる。

しかし、「触れず」・「抱かず」の距離感。


この距離感が実にいい。

「不即不離」などという固いことばではなく、お互いがお互いを

尊重しあい、その領域を犯さず、関りを継続し、持続している。

それは、チビとの関係でもあるし、主人公と妻との関わりでもあり、

大家さんとの関わりにもいえる。




四季おりおりの描写もさることながら、おだやかで、静謐で、時の移ろいが

直に伝わってくる。

それゆえに、いっそう後半の喪失の悲しみがせつない。


     

平出隆さんの『白球礼讃 ベースボールよ永遠に』(岩波新書)は、すでに

購入して読んでいたが、この『猫の客』は、昨日の古書店でみつけたもの。

出だしの1行目から惹きよせられた。


      はじめは、ちぎれ雲が浮かんでいるように見えた。浮んで、

      それから風に少しばかり、右左と吹かれているようでもあった。





このような静謐な文章を読むと、日々の猥雑さをいっとき、忘れさせてくれる。

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