« 歌集『歳月はかへらず』星河安友子  不識書院 | トップページ | 歌集『木ノ葉揺落』 一ノ関忠人  砂子屋書房 »

2019年3月 1日 (金)

『谺せよ』 多田薫句集 花乱社

平成30年11月15日、67歳で永眠した多田薫氏。

その妻、多田孝枝さんの編んだ句集『谺せよ』は、夫君・薫氏の

第三句集であり、最後の精選句集となった。

           草の花帰つておいでと妻の声

           先に咲くカンナ後れて咲くカンナ

           秋の蚊の我を刺すには弱すぎる

           秋風や記憶の糸の長すぎて

           皆同じ夢を見てゐる木の実かな

           生と死の小さなちがひ冬木立

           春寒や夢との境行き戻り

           春の雪小さな望みかなひさう

           あぢさゐにつつまれふたりきりの旅

           いつかまた二人の旅路夏の海

著者の略歴は、平成10(1998)年、『ばあこうど』創刊。

平成26(2014)年、俳誌『六分儀』代表となっている。


この二誌ともに、わたしなどもお世話になり、拙い短歌を掲載して頂いた。

『ばあこうど』は、当時、福岡市の自宅を編集部・事務局としており、

孝枝さんが切り盛りしていたのではなかったか。『六分儀』は、

引っ越された久留米市の自宅を編集室としていたようである。


「句夫婦の至福の旅や濃紫陽花」と薫氏の句にもあるように、句仲間であり

同じ文学を志す同志でもあったのだ。そのたいせつな夫君に先立たれた

孝枝さんの心弱りは、いかばかりであろうか。


しかし、こうして句集を編むという作業に没頭することで、悲しみを紛らわして

いたのではないだろうか。


巻末に「季題別索引」を掲載する念の入れようである。

ほんとうにお疲れさまでした。


孝枝さんが綴った「あとがき」の中で、故・久本三多さんの言葉が記されて

いた。久本さんといえば、もっとも信頼に足る敏腕な編集者であった。

(わたしの第一歌集『早春譜』昭和51年8月10日 葦書房刊)を手がけて

下さったのが久本さんだった。その久本さんの言葉。

     
     独りでいて寂しくない人間になれ


その言葉をわたしもいま噛みしめている。




     全山の木の実降らせよ谺せよ



     題字 山本素竹   装画 西島伊三雄   装丁 別府大悟

     序詩 森崎和江   画  長谷川陽三

     序  筑紫磐井   あとがき 多田孝枝


                           2019年2月22日 発行

                               2000円+税

 

 

« 歌集『歳月はかへらず』星河安友子  不識書院 | トップページ | 歌集『木ノ葉揺落』 一ノ関忠人  砂子屋書房 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『谺せよ』 多田薫句集 花乱社:

« 歌集『歳月はかへらず』星河安友子  不識書院 | トップページ | 歌集『木ノ葉揺落』 一ノ関忠人  砂子屋書房 »