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2019年4月25日 (木)

歌集『スマトラトラ』宗形 光  本阿弥書店

「塔」所属の著者の第一歌集。

2010年から2017年までの歌の中から、467首をほぼ編年体で収めている。

 

   送信をすればたちまち返信を求める自分に変身したり

   ホッチキスの針を外してコピーして針穴にまたホチキスをする

   ハンガーの ?(クエスチョン)の向きが気になりて夜中にそろり

   直していたり

   枕元に穂村弘の歌集置くスマホと眼鏡を載せんがために

   ベランダに洗濯物を干すたびに妻は麦藁帽子をかぶる

   右に箸左にスマホを離さずに若き男は牛丼を食ぶ

   100ページと101ページの両側に栞の紐の円き跡あり

   寝ていてもあなたはずっと食い縛っているのですよと歯科医

   言いたり

   モルヒネのような呼び名のネモフィラを覚えられずに到着したり

   巨人は巨、なれども阪神は阪ならず「神」と記せるスコアーボード

   順番に受けたる名刺を順番に歌留多のように並べていたり

 

 

あげた歌が11首になってしまった。

だいたい10首をめやすに付箋しているのだが…

気付きの歌(発見の歌)が面白いと思った。歌集の後半にいくに従って

付箋の数が増えた。

日常のディテールを切り取り、現実感が伝わってくる。



2首目は、帯で永田和宏さんもあげている歌だが、やっぱり同じようなことをする人がいるのだと共感した歌。

3首目の歌は、同工異曲みたいな「店頭に高く積まるる新刊のずれたる角をそっと揃える」にも目がとまった。宗形さんって、きっと几帳面な人なのだ。(私なども洗面所のチューブ歯磨きなど、正面を向くように並べ替えたりしている。浴室のシャンプー などの並びも勿論、正面を向かせ一列に。いやな性分の私。)

 

4首目、思わず笑ってしまった。だが、これは多少のウソ(笑)が。穂村さんの歌集は 誘眠剤かしら ? 


5首目、女性はそうです。主婦はそうです。麦藁帽子ではないけど私も帽子をかぶって干す。

 

6首目は「右の手は✔の字書くため左手の指三本で電卓打てり」があり、「若き男」と同じようなことをしている ?  いや、違うかな。電卓を打っているので、仕事中みたいだし。

 

7首目、この『スマトラトラ』の栞は172ページと173ページの間に挟まれていたけど、跡は付いていなかった。どうでもいいことだけど。

 

8首目、この歌は深刻。寝ていても体(歯)は、緊張している。サラリーマンの悲哀がこんなところに。

 

9首目の歌、日曜日に行った能古島のアイランドパークのネモフィラの綺麗だったこと。同行の男性2人とも花の名前を知っていたような… (もう、覚えたでしょ。)

 

11首目、これも仕事の歌。歌留多のように並べるくらいだから多くの人との接点がある 職務と推察できる。   

 

 

実直で、現実に根ざした歌が多く並び、働く男性の姿を彷彿とさせる歌集だった。

こんな歌が少なくなったような危惧もあり、久々に身(心も)を入れて、読み終えた。

 

 

                      帯文  永田 和宏

                      解説  三井  修

                      2019年3月21日 初版発行

                        2600円+税

 

 

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