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2019年4月 2日 (火)

馬場昭徳歌集『夏の水脈(みを)』 なんぷう堂

2013年から2018年までの作品から400首を選び収めた第五歌集。

著者は長崎にお住まいで「心の花」所属。

 

 

   この春もこれみよがしに桜咲きこれみよがしがわれは好きなり

   日本語にこれまではなき斬新な語法駆使せし歌をボツにす

   癌病むと聞きしは八月十日なりひと月も経ず逝きてしまへり

   釣り竿の六本残しこの家にもう五年ほど帰らぬ息子

   被爆後の七十一年を生きて来し九十二歳が声ふりしぼる

   一年に三百六十五回ある十一時二分の今日のそのとき

   二発目を終戦前にどうしても落しておきたかつたのだ きつと

   四百八十メートル 原爆が爆発したる高さ忘るな

   あと十年一緒に暮すべき人が隣の部屋でテレビ見てをり

   長崎の港はるかに見下せば夏の水脈曳き船は出でゆく

 

 

1首目、まさに「これみよがし」の桜のようだ。その「これみよがし」がわたしも嫌いではない。

   今日も今日とて、桜の下を歩いてきた。

 

2首目、結句がいかにも馬場さんらしい。斬新は〈奇抜〉と表裏一体。そういう技はアウトなのか。

 

3首目、2人に1人は癌に罹る ? ともいわれている現在、他人ごとではない。「ひと月も経ず」なんてコワイ、

    悲しい。

 

4首目、「五年ほど」なら、まだまだ上出来。息子には息子の生活や信条があるのだ。

 

5首目、「被爆後の七十一年」・「九十二歳」の数詞によって、この歌にいのちが。

 

6首目から8首目にかけては「四百八十メートル」の章の連作の中の3首。

    原爆を直接には体験していない著者が、問題意識を持って成した一連である。

    この章があることで、この歌集はぐ〜んと重みと深みを増したようである。

 

9首目、「一緒に暮すべき人」をうたった歌が他にもあるが、いずれの歌も素っ気ない。

    素っ気ないふりをしているのだが、その愛情(笑)は、伝わってくる。

    それにしても、馬場さんはもっと太らなくちゃ。44キロとか43キロだと春の風にも

    吹き飛ばされそう ? でもないか。

 

 

ところで、「なんぷう堂」って、南風の「なんぷう」かしら。

これって、馬場さんの……

 

 

    

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