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2019年6月23日 (日)

雨宮雅子作品鑑賞『昼顔讃歌ー離教への軌跡』 高旨 清美  六花書林

雨宮雅子さんのの9歌集『鶴の夜明けぬ』、『悲神』、『雅歌』、『秘法』、『熱月』、

『雲の午後』、『旅人の木』、『昼顔の譜』、『夏いくたび』、『水の花』の中の歌を

解釈・鑑賞した一書。

 

キリスト教の洗礼を受け、50年にわたってクリスチャンであった雨宮さんだが、

実質的には教会生活を殆どもつことがなく、観念に傾いたキリスト教観だったこと?

従って、結果的には離教に至ったことを著者が記している。

 

しかしながら、雨宮さんといえばやはりキリスト教を抜きにして語ることは

出来ない。著者が副題に「離教への軌跡」としたのも首肯できる。

 

雨宮さんの歌は、わたしなども好きな方である。

それは、理知的な、自己の内面を視つめた歌であり、一方、息子さんとの関係や

伴侶である竹田善四郎氏を詠んだ歌などに通う人間としての温(ぬく)とさ、

だった。

 

  子を思ふ心ひとつを捨ててきし秋いくたびか群るるコスモス  『鶴の夜明けぬ』

  年月のちり吹きはらひ訪ひきたる子は年月のおくへ去りたり  『悲神』

  捕虫網かざしはつなつ幼きがわが歳月のなかを走れり     『雅歌』

  あひともに天いただかず点滴を享けゐる夫はきさらぎの河   『秘法』

  飲食を共にすることたいせつと思ふ取税人ザアカイ思ふ    『熱月』

  しんかんと干魚焼きゐる真昼間をきみは身体撮(しんたいうつ)されてゐむ

                                                                                    『昼顔の譜』

 

そうそう、肝心の著者・高旨さんの解釈・鑑賞の緻密さに教えられることが多かった。

何よりキリスト教のこと、旧約聖書・新約聖書まで深く理解しており、聖書に出てくる

人名やどういうことなのかをたちどころに解釈してくれる。(たとえば上記5首目の

「ザアカイ」が何者なのか、どういう役割をしていたのかなど詳しいこと多々。)

 

本集の初出は、故・雨宮雅子主宰誌の「雅歌」及び、同人誌「晶」に連載したものを

加筆修正して収めている。雨宮雅子ファンならずともお勧めしたい一書である。

 

                  2019年5月24日 初版発行

                      2500円+税

 

☆    ☆    ☆

なお、当ブログの2014年10月29日に「雨宮雅子さん哀悼」として、

第10歌集『水の花』(角川書店 2012年5月発行)に触れて、書いています。

 

      

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