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2019年8月27日 (火)

歌集『晨光』十鳥敏夫 飯塚書店

「ヤママユ」同人・運営委員の第八歌集。388首を収める。

歌集題の「晨光(しんくわう)」は、杜甫48歳の時の詩、

   幽尋豈に一路ならんや 遠色諸嶺有り 晨光 稍く朦朧たらば

   更に西南の頂を越えん

 

「ひとすじの光を求めて新しい旅に出立しようとした杜甫の心は、

現在に通じるものがあるのではないだろうか。」とあとがきに記す。

 

   おのづから死者の数ふゆ春ごとの花を訪ねてよはひ古るれば

   西行の求世(ぐぜ)のさくらに五濁なほ持て余しをるこころをどうする

   神の名において戦ひしこの国は次は何の名で戦ふならむ

   沖縄に眠れる不発弾二千トン処理にこれから七十年と

   人間がにんげんをころすが戦争といふたうぜんを映像は見す

   飲むほどに両手ひらひら踊り出す島びとたちのこの命力(ぬちぢから)

   をさなごと母と撫子を手折(たをり)をり百年のちも平和であれかし

   赤紙が来つればいのちは神頼み詣でしわかもの数やほよろず

   たつた一つありにし恋は南天の実が知れるなり 方代の歌に

   若葉光(わかばくわう)、新元号はめでたけれどそんなに浮かれゐて

         いいのか知らん

 

 

非戦の思いがそくそくとして胸を打つ一集であった。

10首あげたが、わたしが余計な解説や鑑賞をしない方がいい。

是非、このホネのある歌集を手にとられて読んでほしい。

 

2首だけ、追記。

2首目、作者には『西行の花』の評論集もあるくらいに、西行贔屓。

   「西行&十鳥」とも呼びたいほどの、西行ノボセ(笑)

   「五濁」って、何なんでしょう?

9首目は意外も意外。山崎方代サンの歌が登場する。この歌は好きな

       人が多い。

    「一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております」

 

 

           令和元年8月10日 第一刷発行

              1500円(税別)

 

 

 

 

   

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