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2019年8月16日 (金)

歌集『古酒騒乱』坂井修一 角川書店

2015年春から2017年春までの作品から、423首を選んで収めた第11歌集。

著者は、2015年5月より「かりん」編集人となっている。

「(略)焼酎、ワイン、泡盛、日本酒と思いのほかお酒の歌が多く(略)」

と、あとがきに記している。

 

  いきのこるこの苦しさや春ふかくスマートフォンがまだ鳴きやまぬ

  終はらない書いても書いても らつきようが夜中にひかるわたしの机

  けふこそは仮病で退かめ ねがへども飛行船さつきから動かない

  去りがたきページよここに與謝野晶子老いて売文の悲しみを告ぐ

  こもれびよ先生になつて二十年無芸小食笑はれながら

  いたづらに阿呆のふりして笑止よと『亀のピカソ』をいひしひとあり

  ふうとつく五十七歳息ふかし付箋の先がまだ揺れてゐる

  おとほしのちりめんじやこのちさきやま黒きてんてんの目があり悲し

  寒梅の二合、久保田の一合をのみどに送るわれもゆふやけ

  わがうたの詠み人知らずとなる日来よつばさをかへす宇陀のつばめよ

  この亀はこころの旅をしてゐるか石につまづき石のふりする

  かいつぶりなぜ子を持つや子のわれはちちはは捨てて歌なぞ詠むに

 

 

黄金千貫、剣菱、若山牧水、赤霧、黒霧、ちらんほたる、泡盛、等々の歌が

あるにはあるが……。メラム・カクテル、カベルネ、デキャンタ、チェダー、

ゴルゴンゾーラ、サンジョベーゼとなると、わたしにはお手あげだ。

結局、お酒の歌は9首目の1首のみあげた

 

そういえば坂井さんが『短歌往来』で連載していた「世界を読み、歌を詠む」

では「お酒の素人」などと、ぼやき?ながらも、いろいろな国のお酒を紹介して、

その飲み方まで伝授(笑)していた。

 

   (略)酒の名はアグアルディエンテ(舌を噛みそうな名前だ)。サトウキビの

     蒸留酒である。これを切り子ガラスの杯に入れて、ストレートでひと口

     やるーーアグアルディエンテはラム酒の仲間だが、ふつうのラムよりも

     香りが強く甘い感じ。

                       『短歌往来』2019年4月号より

 

   (略)冷蔵庫からグランクリュを出して、グラス三分の一ほど注ぐ。ほんの少し

     だけ黄緑がかった色合い。柑橘系の香り。シャルドネの冴えた味わい。

     ミネラル感。(略)

                       『短歌往来』2018年11月号より

 

と、まぁその回(著書)に合うような、お酒を選び、味わいながら、読み進めてゆく

スタイルは大人の文章の感じがして、とても好きだった。

さてさて12首引用したので少しでも鑑賞してみたい。

 

2首目の「らつきよう」はお酒のアテなのかしら。「書いても書いても」に合う。

3首目、仮病で早退したいのだけど、あの飛行船のように動けない。

6首目は前歌集の『亀のピカソ』を誰かが揶揄って「いたづらに阿呆のふりして」

   と言ったのだろう。少しは心当たりがあったのだろうか?

9首目の結句「われもゆふやけ」がいい。この夕焼けは気持ちいい夕焼けだ。

10首目、せつなる願いでもあろう。

12首目の歌の結句が気になって仕方なかった。「歌なぞ詠むに」とある。

   漢字にすると「歌謎」と読めないこともない。

   単純に「歌など詠むに」の、「ど」ではダメなのかな、と。

   広辞苑で調べてみると、「何(な)ぞ」ナニソの転。何であるか。

   どうして。なぜ。なんという。どんな。の意とある。

   誤植かなぁと早とちりしたけど、そんなことはなかった先生は(笑)

 

 

                       2019年7月25日

                       かりん叢書第348篇

                       2600円+税

 

 

 

 

 

 

  

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