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2019年9月 1日 (日)

歌集『人間旦暮(秋冬篇)』坪野哲久 不識書院 

本日は9月1日ということで「関東大震災記念日」でもある。

それによって「防災の日」も出来たわけだと知った。

 

明治29年9月1日生まれの坪野哲久に『九月一日』の歌集がある。

この歌集は紅玉堂書店より昭和5年に刊行されているが発売禁止に

なっている。この幻の歌集については歌誌「月光」の2019年4月 №58で

福島泰樹が「野晒の歌 坪野哲久 壱 『九月一日』前後 」として同誌に

13ページに及ぶ論を執筆している。(なお、同号では「坪野哲久没後三十年」 

の特集を組んでいる。)

 

今、わたしの手元にある坪野哲久の歌集は『人間旦暮 春夏篇』・『人間旦暮 

秋冬篇』(2冊ともに不識書院にて1988年12月に出版。)『留花門』(邑書林 

1989年11月刊)の3冊である。

9月1日生まれの哲久にちなんで、本日はこの3冊の歌集を繙く。

 

    輪読の果てたるあとに座の五人もりそばを食うわれの生日

    人間にいかなる虚位が要(い)るものぞ働かずして罪ふかく食う

    つつましく原初を想え人間は貴も賤もなく生まれいでしを

    いまの世のうざうざしきを拒むわれ思惟の残りを星へと運ぶ

           『人間旦暮 秋冬篇』「九月一日」より

 

 

連作の9首の中から4首のみ引用した。

書き写しながら身のひきしまる思いがしてくる。

安穏と生きている自分自身が鞭打たれる。

哲久が生きていたら「いまの世」をなんと詠むだろうか。

 

坪野哲久は「関東大震災に遭遇。在日朝鮮人の虐殺を目撃したことが、以後の

哲久に、大きな影響を与えることになる。(略)」(福島泰樹・「月光」文より)

関東大震災の日に17歳の誕生日を迎えている哲久。

 

本日は9月1日なり。

 

  

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