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2019年10月29日 (火)

歌集『手のひらの海』平山繁美 本阿弥書店

短歌を初めて14年、「かりん」に入会して5年の著者の第一歌集。

時系列に纏められており、Ⅰ章、Ⅱ章あたりは過去を振り返り、当時の

思いや状況を、現在形でうたっているようだ。

子を身籠り、出産するあたり、体験者ならではの迫力と真情が直に伝わって

くる。

 

   黙禱の時間増えゆく地球(ほし)に生く手のひらの地図をひたりと合わせ

   大潮に呼ばれています産気付く私の身体は地球の一部

   ねむりからはいあがるがごとみどりごのさんぜんぐらむのおおきなあくび

   ガスの火を赤から青に絞りたりこの子の未来はわたしが護る

   夫から子を護らずに加担するいかなる場にも女は慣れて

   少しだけわかる気がして貝になる一線越えない母だ。わたしは

   ぼくのふく ぼくのながぐつ ほくのはし ぼくぼくぼくがいっぱい

   あるね

   やわらかき新芽食むごと子に呼ばれかあさんはわたしわたしがかあさん

   「かえるはね、かあさんがいないからなくんだよ」そうかもしれぬ

   お前が言えば

   じゃこ天は中から外へ膨らみぬわくわくするってこんな感じだ

   玄関はツバメと人の出入り口子育て終わりわたしが残る

   土の香の似合う子だろう息子より六回多く春を知る人

 

こうして、あげてゆくと著者の25年間くらいが1冊の中に込められている。

一人の女性が生きて、子どもを産んで、その子を育てて(母子家庭)、自立

させるまでがうたわれている。

 

時に、5首目、6首目のようなあやうい時期もあったのだが、そこは聡明な

著者のこと、回避できて、無事巣立って行った息子さん。

「必要以上の愛情はもらった。」と告げられた著者。

 

帯文の馬場あき子のことば「(略)すべて今日的社会問題そのものを生きて

苦しみ、行動した女性の姿がここにある。(略)」に尽きていよう。

 

多くの方々にこの一集を薦めたい。(ことに女性たちに。)

きっと、得るものがあると思う。

 

 

       

      帯文 馬場あき子

      解説 川野 里子 現代の聖母子像ーー命の現場を見つめて

        2019年9月27日

         2700円+税

 

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