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2019年11月

2019年11月30日 (土)

「福岡市文学舘企画展」そのご……

令和元年度の福岡市文学舘企画展が11月8日から開かれているが、

残すところ半月ばかりとなった。最終日は12月15日(日)である。

 

「久保猪之吉・より江の短歌」の恒成美代子の記念講演は11月17日終了。

当日の模様を「南の魚座 福岡短歌日乗」のブログにて、2019年11月20日、

有川知津子さんがとても丁寧に紹介してくださっている。(遅ればせながら

本日気付きました。ありがとうございます。)

 

そのブログで有川さんも触れてくださっているように「郷土の歌人をそこに住む

人が繰り返し取り上げて発信していくことが大事」だと、つくづく思う。

郷土の歌人を、郷土のわたしたちが取り上げるのが先ず第一なのだ。

 

そういった意味でも、昨日松山のWさんから電話があったのは嬉しいことだった。

Wさん(「未来」会員)は現在、図書館勤めである。ふとしたことから、

久保より江のことに関心を持ち、今回の福岡市文学舘の企画展に注目して

くださった。

早速、福岡市文学舘選書の『久保猪之吉・より江』1冊と記念講演のレジュメなど

諸々をレターパックでお送りしたところだった。

どのような形であれ、反響があるのはうれしいことだ。

松山には正岡子規という超・大物俳人がいるし、文学者にはこと欠かないと

思うけど、今後、こういった話題というか、企画は広がっていってほしい

ものだと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

2019年11月29日 (金)

「梁」2019.11   現代短歌・南の会

第97号である。

巻末の「本号執筆者」を見ると、34名の方々の名前と住所が

掲載されている。同人誌としても圧倒的な人数である。

 

前96号で特筆したいのは、生田亜々子の「変身の刻 ~石牟礼道子の短歌研究

五十首~」であった。克明な資料を丹念に検証したものであり、石牟礼道子の

25年間の歌作期間を考察した文章は、読み応えがあった。

 

そして、このたび97号の同じく生田亜々子の「本棚の行方ーー熊本県立図書館

内田文庫ーー」も、私などには<わが本の行方>としても今まさに模索している

ことでもあり、参考になった。

 

    内田文庫の寄贈は生前なのか死後なのか書かれていないため……(略)

    本というものは持ち主の死後、あまり大切にされない場合が多いのではと

    感じている。

 

    遺族が遺品整理として処分するからであると言っても間違いはないだろう。

 

    京都大学名誉教授であり「第二芸術論」などを記したフランス文学者、

    桑原武夫の死後、蔵書一万冊が遺族により京都市図書館に寄贈された後、

    三〇年余りを経て保存場所を転々とし放置されたあと利用価値のない

    ものとされ廃棄されていたというニュースがあった。……(略)

 

等々、読んでゆくうちにホントに肌寒くなってくる。

桑原武夫の蔵書が廃棄処分なんて信じられないことだ。

まして一介のわが蔵書など推して知るべしであろう。

 

もはや、こうなったら<生前贈与?>を、どなたかと交わして、

わが本たちのお弔いをするしかない(笑)

 

「熊本県立図書館内田文庫」の9501冊は奇跡である、とも書かれている。

本棚そのままに寄贈した遺族と、そのまま登録し管理している図書館。

それが「熊本県立図書館内田文庫」であった。幸い哉。

 

同人の皆さまがたの作品に触れたかったが、次号にお預けしたい。

Fさん、ありがとうございました。

 

 

                               2019年11月10日発行

             編集人 伊藤一彦

             発行所 現代短歌・南の会

              頒価 1500円

 

 

    

    

 

2019年11月27日 (水)

ご案内 「石橋秀野の俳句についてーー愛と死をめぐつて」 講師 岸本尚毅 氏

山本健吉資料室オープン5周年記念、山本健吉文学講演会のご案内です。

 

  日  令和元年12月22日(日)

  時  13:30〜15:00 (受付開始 13:00)

  会場 八女市 岩戸山歴史文化交流館

         「いわいの郷(さと)」

     〒834-0006

                福岡県八女市吉田1562-1

                 TEL  0943-24-3200

      

  講師 岸本 尚毅(なおき)氏 俳人

               1961年岡山県生まれ。

      1979年赤尾兜子に師事し、赤尾の逝去後は波多野爽波に師事。

     『高浜虚子 俳句の力』(三省堂)

     『高浜虚子の百句 俳句のこころを読み解く。』(ふらんす堂)

     『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』夏井いつき氏との共著(祥伝社)

      2009年の第1回石田波郷俳句大会より選考委員。

      角川俳句賞選考委員。岩手日報選者。山陽新聞選者。

      日本文芸家協会会員。  

 

  

  主催  八女市・八女市教育委員会

  申込先 八女市岩戸山歴史文化交流館「いわいの郷」

      TEL  0943-2403200

                 FAX  0943-24-3210 

 

 

*   *   *

上記、「山本健吉文学講演会」宜しくお願いします。

私は関係していないのですが、告知するのを頼まれていました。

自分事に振り回されていてご案内が遅くなってしまいました。

どうぞ、ご興味ご関心のあるかたはお出掛けくださいませ。

定員100名です。入場無料ですが、申し込みが必要です。

 

 

 

 

 

 

2019年11月22日 (金)

映画「ひとよ」 白石和彌監督

「ひとよ」は「一夜」だった。

15年前のある事件。

母と3人の子どもたちのそれから… 15年後の再会。

次男の佐藤健の屈折した精神、その演技。

母親役の田中裕子。何があってもブレない精神の強さ。

 

崩壊してしまった家族の絆を取り戻そうと、もがく長男と長女。

「約束だから、かあさんは帰ってきました」

せつない、せつない。

<行動でしか思いを伝えられない人間>

 

ラストのカーチェイスは、必要だったのか?

 

 

2019年11月21日 (木)

歌集『亡友(Boyu)』 福島泰樹 角川書店

第一歌集刊行から50年、福島泰樹32冊目の歌集である。

著者本人の「跋」の文章が実に良い。

 

     友とは記憶の共有者であり、

     友の死は、友の記憶に生きている

     私の死に他ならない

 

   輸血に加え食事の停止命じたと柔らかに笑み笑みて告げにき

   雨の朝青梅に死すや白玉の 霜月二十三君を喪う

   名を問わば村上一郎、罵詈山房海軍主計大尉某(それがし)

   東京市下谷區下谷一丁目「東京市民」としてわれ生まれ来し

   省線の過ぎゆく音よぼくを生み同じベッドで母逝きたまう

   わが終の住処(すみか)を問わば東京市下谷區入谷 父母

   (ちちはは)眠る

   被害者意識相互慰謝的私(わたくし)短歌寺山修司、斯(か)く

   語れるを

   「わたくし」を世界の唯中に解き放て一人称を逆手にとれよ

   「ヤスキ!」と呼ぶは英之、見上げれば羊雲 君と茂樹なるらむ

   人生の渚に浮かぶ白い雲 波に呑まれて消えてしもうた

 

 

読みながら、書き写しながら、福島泰樹の熱い血がかけめぐるようである。

 

1・2首目は、画人として近現代美術に造詣の深かった松平修文氏のことである。

2017年11月23日、お亡くなりになられている。氏の第一歌集『水村』(1979年)

の歌の瑞々しさは忘れ難い。「水につばき椿にみづのうすあかり死にたくあらば

かかるゆふぐれ」。夫人は歌人の王紅花さん。個人誌の「夏暦」を出している。

2017年の44号のあとがきには「松平は、重い病気が四つもあるが、現在小康状態。

毎日歌をつくり、絵を描く。その熱心には感心する。(略)」と綴られていた。

 

3首目、「村上さんと会ったのは目黒、喜多能楽堂」の詞書あり。

村上さんへの追悼歌集『風に献ず』(昭和51年7月 国文社刊)には「自刃せる

村上一郎氏に」と添えられていた。1ページ1首組の贅沢な構成で、表紙は濃紺

だった。

 

   弥生三月なにを悲しむ汽車は野に医者は花見にゆきしとぞ聞く

   椿落ちおれはせつなき歌つくる いざ鎌倉へゆくこともなし

                   『風に献ず』福島 泰樹

 

4・5・6首目は、福島泰樹の「わたくし」の歌。

 

9首目の詞書には「八月、小中英之死去。押しかけ兄貴小中は、私を呼び捨てた」と

あり、「羊雲」は小野茂樹のことだろう。2001年のこと。

 

10首目の詞書には、「五月、若き日の相棒、清水昶逝く」とあり、2011年のこと。

 

歌集題が示すように、亡くなった友を悼み、詠んでいる。

福島さんには、2015年刊行のエッセイ集『歌人の死』(東洋出版)があり、

2016年には『哀悼』(皓星社刊)の歌集がある。

こうしてうたうことによって「死者は死んではいない!」と思いたいし、

そう思っているのだろう。

 

 

 

           2019年10月25日

            2600円+税 

 

 

2019年11月19日 (火)

「青い花」第四次 73号 詩・小説・エッセイ

「青い花」第一次は創刊は、1934年で、太宰治、山岸外史、檀一雄、

中原中也、今宮一、木山捷平など。熱気溢れるものであったが、財政上の

こともあって1号で終った。

 

その「青い花」が、第二次、第三次を経て、再出発の第四次の73号、通巻

110号である。(と、云っても、これは、2012年11月30日発行のものである。)

 

ひょんなことから、わたしの手元に届いた。

むかしむかしの友人が東京から一昨日持って来てくださったのだ。

そう、「埴生の宿」をハーモニカで吹いてくれたお人である。

その彼女の詩をすこし紹介したい。

 

 

     「桃」に寄せて     坂本 登美

 

   東日本大震災と 原発事故と 風評被害と

   このトリプルパンチの故か

   丹誠して育てた「桃」が出荷激変で

   今後の栽培の見通しが立たず苦悩している

   と 福島から便りが届いた

 

   今もって 故郷を離れて暮らす子どもたちや

   放射能汚染に関わるニュースなどが

   わたしの胸を息苦しく圧迫する

 

   (略)

   (略)

 

   最愛の妻を訪ねた黄泉国(よもつくに)で

   伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は雷神に追われたとき

   黄泉比良坂(よもつひらさか)で「桃の実 三つ」を投げつけて難を逃れ

   「汝(いまし)、吾を助けしがごと、葦原の中つ国にあらゆる

    現(うつ)しき青人草の、苦(う)き瀬に落ちて、患惚(たしな)まむ時、

    助けてよ」とのりたまいて、

    桃の実に意富加牟豆美命(おおかむずみのみこと)といふ名を賜ひき。

   とあるが

 

   世界初の原子爆弾の被爆体験をなぜ生かせないのか

   六十七年もかけて築いた平穏がなぜ脅かされているのか

   わたしたちを取り巻く邪鬼の如きものを払うために

   天災人災で崩壊したふるさとを桃源郷にもどすために

   この豊葦原を生んだ男神が手にした桃の実の一つでよい

   我等に与えてはくれまいか

   誰でもよい

   誰か「福島の桃」にも霊力を与えてはくれまいか

 

 

  坂本登美(さかもととみ)さんは、東京都在住。「青い花」同人。

 

   

 

2019年11月18日 (月)

<祝> 「読売歌壇」新選者に黒瀬珂瀾さん。

ほぼ半世紀にわたり「読売歌壇」の選者をなさっていた岡野弘彦さんが

12月で選者を退任なさるそうだ。

それで、新選者は「未来短歌会」の選者を務めている黒瀬珂瀾さんに決定の由。

黒瀬さんの「歌を紡ぐとは」の新選者のことばが掲載されていた。

 

   日常生活に流れるささやかな感情、季節の移ろい、そして、大きな声に

   かき消されそうになる、小さな声。それらを掬い取り、隣の人に手渡す。

   それが歌を紡ぐということだろう。多種多様な思いが、声が、そして

   歴史ある日本語の美しさが響き合う場を作るお手伝いが出来れば、選者と

   してこれ以上嬉(うれ)しいことはありません。よろしくお願いします。

 

なんだか、すてきな挨拶のことばにうるっとなる。

第1歌集の『黒耀宮』から、第3歌集の『蓮喰ひ人の日記』と黒瀬さんの歌を読んで

きた一人として、感無量の思いがしている。

 

 

*   *   *

昨日、福岡市文学舘企画展の「草紅葉ーー久保猪之吉とより江」の講演会は

無事、終わりました。ご出席くださいました皆様方、ありがとうございました。

 

東京から駆けつけてくださったSさんがいらしたことを講演が終わって知りました。

驚かそうと思って……などと、相変わらず自由気儘(笑)なSさんでしたが。

終わって別室で「埴生の宿」のハーモニカを聴かせていただきました。

ことばも出ないくらい感激しました。このところ涙腺が脆くなっているので

すぐに泣いてしまいます。

泣くのを知られたくなく、皆さんを振り切って帰って来ました。

 

新聞の切り抜きを持って来てくださったOさん、ありがとうございました。

11月も半ば、いのちをいとおしみながら生きてゆきます。

 

 

       句も歌も思はぬ今朝やさわやかに  久保より江

 

 

(miyoko注)「さわやか」は、歴史的仮名遣でも使用されているみたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年11月13日 (水)

歌集『花折断層』近藤かすみ 現代短歌社

『雲ケ畑まで』に続く第二歌集で、339首を収めている。

 

  (略)「はなおれ」というやわらかく儚い語感と、断層のインパクトを

     併せ持つ名に惹かれて、歌集題とします。

                       「あとがき」より

 

三陸産わかめサラダを食みしのち『海辺のカフカ』下巻に入りぬ

スピーカーの絵のあるキーに導かれ夜の机に翡翠(かはせみ)啼かす

いくとせを生きたる猫か続小池光歌集の裏の表紙に

電球の切れたときだけ足が乗るあなたの座つてゐた白い椅子

手元より画面に視線をうつすときマウスポインタをまた見失ふ

白きテープ左手首に巻かれたり入院患者のひとりとなりて

病棟のLAWSONに買ふ新聞に色とりどりのチラシはあらず

左からダウンジャケットの腕が来て白いティッシュを素早く渡す

仏壇にねむる臍の緒五個ありぬわれの棺にみな入れたまへ

生きてゐる家を殺めて生きのびむ京の花折断層の上

 

 

生まれ育った京都市左京区にずっと暮らしている近藤さん。

京都の鴨川や加茂大橋、荒神橋など川の名前や橋の名前、地名などが

折々に出てきて、旅心を誘われる。彼女にとっては日常の風景、一駒

なのだろう。

 

10首選歌しながら思ったのは、1首がほど良いバランスのもとに

構成されており、それも意図的には見えずごくさりげなく物や地名、

あるいは書名などが収まっていることだ。

 

例えば、1首目の「三陸産わかめサラダ」と『海辺のカフカ』は全然

関係ないのだが、つかず離れずの間合いをもってしっくりしている。

 

2首目の「夜の机に翡翠(かはせみ)啼かす」も巧いなぁと感嘆する。

 

3首目の「続小池光歌集」の裏表紙の写真には猫が写っている。あの

写真を最初見た時は、いやがっている猫を小池さんが無理矢理抱いている

と思ってしまった。小池さんの一方的な<愛>を、猫ちゃんが拒んでいる

ような(笑)

 

5首目など、同じような体験をした人もいるのでは?だけど、歌にできない。

 

7首目は、そうなんだ、と共感。コンビニで買う新聞にはチラシが入っていない。

宅配の新聞には多量のチラシが入っていて、邪魔でもあるけど、1枚も入って

いないとやはり、さびしい。

 

9首目、そうか。棺に入れて欲しいものもリクエストしておけば良いのか。

 

10首目、「花折断層」に関わらず、地震国日本に住むわたしたちは、いつ、

どこで地震があるかもしれない。「断層のインパクトを併せ持つ名に惹かれて」

などと、暢気(?)なことを言っていられないかも……などと思ったりした。

 

 

                帯文  小池 光

                2019年10月13日

                 2500円+税

 

 

                  

2019年11月12日 (火)

<速報> スターリンク衛星を観ました。

2019年11月12日、18時30分頃、福岡上空の西の空を飛んでゆく

スターリンク衛星を観ることができました。

 

60個の衛星が一列に並んでゆくらしいですが、わたしの確認できたのは

10個強?、いやもっとかな、でしょうか。(肉眼でみえました。)

 

何が何やらわかりませんが、60個の衛星を打ち上げたのでしょうか。

夜空を一列に並んで飛ぶすがたは銀河鉄道を見るようでもありました。

不思議なものを観ている感じがしました。

 

丁度、夕食のあとだったので、連れ合いを大きな声で呼び、二人で眺めました。

夢ではない。でも、夢のようなあっというまの瞬間でした。

18時20分にタイマーをセットして待機していた甲斐がありました。

 

それにしても、瞬く星の光よりもよく見えたということは、

どうなんでしょうね?。

 

今夜は満月、昨夜のお月さまも綺麗でした。

 

 

2019年11月11日 (月)

季節の便り(35) 梨と柿と、茹で落花生

果物の美味しい季節である。

日田梨の「新高(にいたか)」を頂いた。この新高の名前の由来を知らずに

大きな梨を剥くときに呟くのが「二イタカヤマノボレ」だったのが、なんとも

可笑しい。旧日本軍による真珠湾攻撃の開戦を告げた無線…「二イタカ」。

 

梨の名前はそこから来ているのではなく、新潟県の「天の川」と高知県の

「長十郎」を掛けあわせたものらしい。それで頭文字をとって「新高(にいたか)」

に。しかし、これは後日談があり、高知県ではなく神奈川県産だったらしいが…

 

柿は「平核無柿(ひらたねなしがき)」は扁平で形は四角。

種がないことで、有名だが、これが渋柿とは知らなかった。

先だっての歌会にこの四角な柿が出てきて、みんなで調べた。

わたしたちがお店で買って食べているのは、どうも「渋」を抜いて

売られているらしい。

 

こうしてみると普段口にしているものでも知らないことが多い。

「茹で落花生」が売られていることを知らなかった。

子どもの頃、落花生の収穫のあとは必ず大きな釜で、茹で落花生をして

家族で食べたものだ。

今年もMさんから「茹で落花生」を頂いた。丁寧にも冷凍にしてあったが…

ビールのつまみにもなる優れモノ。

食べ出したらキリがない。         おいしゅうございました。

 

2019年11月 8日 (金)

季節の便り(34) 立冬

本日は立冬。

木枯らしが吹きはじめると、西高東低の冬型の気圧配置になる。

立春までが暦の上での冬。

 

この季節に届く訃報は悲しい。

訃報はいつだって悲しいのだが、4年前の12月8日に亡くなったのは義母。

84歳だった。

 

     「しよんなかたい」母の繰り言思ひ出づ生きてしあらば

      何といふらむ             miyoko

 

 

実母のことよりも、この頃は義母のことばかり思い出される。

わたしが義母と初めて会ったのは50歳になったばかりの頃であった。

わたしのような拙い人間を受け入れてくれた。そして、包みこんでくれた。

器の大きいひとであったとつくづく思う。人を攻撃するということのなかった

義母であった。

 

本日は、義母の<月命日>でもある。

 

      

      

2019年11月 5日 (火)

『乾いたパレット』山田泉歌集 六花書林

2015年「短歌人」入会の、338首収めた第一歌集。

 

東日本大震災の大津波で母を喪う。

都内の公立小学校で図工の専科教諭として30年勤務した。

著者は絵画を描き、個展も開く。本集の装画は著者の手による。

 

   立ちながら朝食をとる作業員 春雨けむるコンビニの外

   忘れられぬ最初と最後の勤務校は大東京に姿を消しぬ

   震災に母を亡くしし悲しみは間欠泉のごと吹き返すのか

   叶うなら震災前のあの庭で母と語らい草取りしたい

   待ち針の刺さりしままに残りおり逝きたる母の藍のワンピース

   コスモスを活けて林檎をふたつ置く母の遺影は秋になりけり

   タスマニアへ行くはずだったこの日々を癌病棟にて夜景楽しむ

   転移なしと告げる外科医のうちとけて寺山修司へ話題は変わる

   さか道の藤田嗣治の巴里風景 路面電車がまもなく曲がる

   布の上に隼人瓜三つ配置して四日過ぎたり 写生は途中

   途切れなきバイク、車をかき分けて道路は渡る気を強くして

   十月の空に朝顔咲きつづく千七百も数えてきたり

 

3・4・5・6首目は、震災の津波で亡くなった母の歌。「間欠泉」のように

  吹き返す悲しみに、言葉もない。いきなり攫われてしまったのだから。

 

7・8首目を読むと、あえて明るくうたっているのかもしれないが、

 「癌病棟にて夜景たのしむ」とはなかなかうたえない。

  そして、8首目では、外科医と寺山修司の話題へ。精神の靭い人なのだろう。

 

9首目は、画家らしいモチーフである。藤田嗣治の巴里の風景写真から

  路面電車の勾配まで発想したところがいい。 

 

そして10首目は、歌集題にもなった『乾いたパレット』を暗示する「写生は途中」。

 

11首目は、ベトナムの道路事情がそのまま伝わってくる。躊躇せず堂々と渡って

  下さい、などと、添乗員さんが言うけど、「気を強くして」していても

  私は渡れなかった。

 

12首目、朝顔の花が1700個は、なかなかの数。ひと夏楽しみ、その朝顔は

  10月まで咲き続けたのだろう。(そういえば、わがやの夕顔はまだ2つ

  莟が付いている。)

 

 

               跋  生の活気あふれて  小池 光

                 2019年10月19日 初版発行

                     2000円+税

 

 

 

 

2019年11月 4日 (月)

『84歳の母さんがぼくに教えてくれた大事なこと』 辻 仁成 KADOKAWA

「作家・辻仁成の半生とともに語られる母の人生訓」とは、帯の惹句なり。

辻さんの少年時代が生き生きと綴られている。

辻少年を見詰める母のまなざし、そのまなざしのなんと慈愛に満ちて

いることか。そして、何よりもいたるところに母の金言が飛び出す。

<箴言>とでもいうべきか。

 

刺繍教室のお弟子さん一人一人に誠実に向き合う母。

 

   人間にはね、楽しく生きる権利があるんですよ。同じように死ぬ権利も

   ある。その二つをきちんと噛みしめて生きるとね、与えられた一生が尊い

   ものになります。たった一度の人生、くよくよ生きても、楽しく生きても

   それはあなたの自由だからね。私はこう思います。誰にはばかることなく

   生きたらいいんじゃないかって。でしょ。せっかく権利があるんだから。

 

「母さんとは何者か」の最終章の言葉が実にいい。

これぞ、気合十分の母堂である。

 

   ひとなり、よかか。人の踏み台になるな。敬意のない人間と仕事をしては

   ならん。お前も付き合う人たちには敬意をもって向き合え。お互い尊敬し

   あった時に人間は伸びるし、成功は訪れる。リスペクトのない人間関係は

   続かない。よかか、誰のための人生だ、と思え。それはつねに自分のための

   人生なんだ。自分が幸せにならなければ人を幸せにすることはでけん。誰かを

   幸せにしたいなら、まず自分が幸せになれ。幸せは人に伝わっていく。(略)

 

 

著者が作家になったばかりの頃に、母さんから言われた言葉。

 

   ひとなり、依頼されたらすぐに仕上げてしまえ。そうすればお前には

   時間が与えられる。その時間でまた別の作品と向き合えばいい。人生が

   二度美味しくなる。

 

 

とは、云ってもねぇ。(笑)

 

「大野島のマドンナ」と呼ばれていた頃の母さんが実に可愛い。(P171写真)

この本が売れるのはうれしいけど、「母さん」有名人になってしまって、

それはそれで困ったり…(笑) しないかなぁ。

 

 

                                2019年10月31日 初版発行

                 1500円+税

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      

2019年11月 3日 (日)

映画「最高の人生の見つけ方」 犬堂一心監督

吉永小百合と天海祐希主演。

家庭第一主義の主婦・幸枝に吉永小百合、その娘に満島ひかり。

大金持ちの女社長・マ子に天海祐希。

 

余命宣告を受けた二人が偶々同じ病室となる。

少女の落として行ったノートに書かれていたのは「やりたいことリスト」。

死ぬまでにしたいことが書かれているノートであった。

 

そのやりたいことリストを一つ一つ少女にかわって余命わずかな二人が

実現してゆく。

中でも「ももいろクローバーZ」のライブは迫力があった。

映画を観ているこちらまでその感動が伝わってきて、からだがリズムを

とっていた。(笑)

 

家では何一つしない、協力的でない夫(前川清)と引き籠もりの息子がいて

つらい立場の幸枝。

          「言わなければ相手に伝わらない」

 

と、いうことにも気づく。

涙が出てしまう場面もちらほらとあり……

 

残りの人生のたのしみ方を考えなくちゃ……

 

 

 

 

 

 

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