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2019年11月19日 (火)

「青い花」第四次 73号 詩・小説・エッセイ

「青い花」第一次は創刊は、1934年で、太宰治、山岸外史、檀一雄、

中原中也、今宮一、木山捷平など。熱気溢れるものであったが、財政上の

こともあって1号で終った。

 

その「青い花」が、第二次、第三次を経て、再出発の第四次の73号、通巻

110号である。(と、云っても、これは、2012年11月30日発行のものである。)

 

ひょんなことから、わたしの手元に届いた。

むかしむかしの友人が東京から一昨日持って来てくださったのだ。

そう、「埴生の宿」をハーモニカで吹いてくれたお人である。

その彼女の詩をすこし紹介したい。

 

 

     「桃」に寄せて     坂本 登美

 

   東日本大震災と 原発事故と 風評被害と

   このトリプルパンチの故か

   丹誠して育てた「桃」が出荷激変で

   今後の栽培の見通しが立たず苦悩している

   と 福島から便りが届いた

 

   今もって 故郷を離れて暮らす子どもたちや

   放射能汚染に関わるニュースなどが

   わたしの胸を息苦しく圧迫する

 

   (略)

   (略)

 

   最愛の妻を訪ねた黄泉国(よもつくに)で

   伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は雷神に追われたとき

   黄泉比良坂(よもつひらさか)で「桃の実 三つ」を投げつけて難を逃れ

   「汝(いまし)、吾を助けしがごと、葦原の中つ国にあらゆる

    現(うつ)しき青人草の、苦(う)き瀬に落ちて、患惚(たしな)まむ時、

    助けてよ」とのりたまいて、

    桃の実に意富加牟豆美命(おおかむずみのみこと)といふ名を賜ひき。

   とあるが

 

   世界初の原子爆弾の被爆体験をなぜ生かせないのか

   六十七年もかけて築いた平穏がなぜ脅かされているのか

   わたしたちを取り巻く邪鬼の如きものを払うために

   天災人災で崩壊したふるさとを桃源郷にもどすために

   この豊葦原を生んだ男神が手にした桃の実の一つでよい

   我等に与えてはくれまいか

   誰でもよい

   誰か「福島の桃」にも霊力を与えてはくれまいか

 

 

  坂本登美(さかもととみ)さんは、東京都在住。「青い花」同人。

 

   

 

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