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2019年11月13日 (水)

歌集『花折断層』近藤かすみ 現代短歌社

『雲ケ畑まで』に続く第二歌集で、339首を収めている。

 

  (略)「はなおれ」というやわらかく儚い語感と、断層のインパクトを

     併せ持つ名に惹かれて、歌集題とします。

                       「あとがき」より

 

三陸産わかめサラダを食みしのち『海辺のカフカ』下巻に入りぬ

スピーカーの絵のあるキーに導かれ夜の机に翡翠(かはせみ)啼かす

いくとせを生きたる猫か続小池光歌集の裏の表紙に

電球の切れたときだけ足が乗るあなたの座つてゐた白い椅子

手元より画面に視線をうつすときマウスポインタをまた見失ふ

白きテープ左手首に巻かれたり入院患者のひとりとなりて

病棟のLAWSONに買ふ新聞に色とりどりのチラシはあらず

左からダウンジャケットの腕が来て白いティッシュを素早く渡す

仏壇にねむる臍の緒五個ありぬわれの棺にみな入れたまへ

生きてゐる家を殺めて生きのびむ京の花折断層の上

 

 

生まれ育った京都市左京区にずっと暮らしている近藤さん。

京都の鴨川や加茂大橋、荒神橋など川の名前や橋の名前、地名などが

折々に出てきて、旅心を誘われる。彼女にとっては日常の風景、一駒

なのだろう。

 

10首選歌しながら思ったのは、1首がほど良いバランスのもとに

構成されており、それも意図的には見えずごくさりげなく物や地名、

あるいは書名などが収まっていることだ。

 

例えば、1首目の「三陸産わかめサラダ」と『海辺のカフカ』は全然

関係ないのだが、つかず離れずの間合いをもってしっくりしている。

 

2首目の「夜の机に翡翠(かはせみ)啼かす」も巧いなぁと感嘆する。

 

3首目の「続小池光歌集」の裏表紙の写真には猫が写っている。あの

写真を最初見た時は、いやがっている猫を小池さんが無理矢理抱いている

と思ってしまった。小池さんの一方的な<愛>を、猫ちゃんが拒んでいる

ような(笑)

 

5首目など、同じような体験をした人もいるのでは?だけど、歌にできない。

 

7首目は、そうなんだ、と共感。コンビニで買う新聞にはチラシが入っていない。

宅配の新聞には多量のチラシが入っていて、邪魔でもあるけど、1枚も入って

いないとやはり、さびしい。

 

9首目、そうか。棺に入れて欲しいものもリクエストしておけば良いのか。

 

10首目、「花折断層」に関わらず、地震国日本に住むわたしたちは、いつ、

どこで地震があるかもしれない。「断層のインパクトを併せ持つ名に惹かれて」

などと、暢気(?)なことを言っていられないかも……などと思ったりした。

 

 

                帯文  小池 光

                2019年10月13日

                 2500円+税

 

 

                  

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