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2020年1月 8日 (水)

短歌同人誌「穀物」第6号 

  泣いて観た映画のことを話すとき君は古典派の指をしてゐる

  切りすぎの爪のいたみを走らせてアルぺジオとはひかりの鎖

  こころは声にこゑは夜霧にながれつつなぐさめてくれなくていいから

  しばらくはここにゐるから連弾の真似事をする一つの椅子で

                「夜霧を踏む」より 濱松哲朗

 

  まひるまの空港のこの明るさに人は歩けりみな顔を上げ

  君が乗る便は探さず対岸の街を見ている展望デッキ

  電話口の声の暗さに気をとられそこから別れまで速かった

                「花を吐く」より 廣野翔一

 

  電子レンジで卵を爆破したのちに泣きながら食うからい焼きそば

  歌舞伎町のルノアールで置いていかれる濡れた犬のようなわたしだ

                「栞」より 狩野悠佳子            

 

  夜の雲を抜けて降りゆく東京の光の縁(ふち)は海に滲めり

                「蛹」より 小原奈実

  天使にも竜にもあらぬこのからだ銀のヒールの台座に載せて

                「竜のくちべに」より 川野芽生

  しゃべるとき語尾が若干西に行くあなたしか言わない二人称

                「放水路」より 新城達也

  怒りから怒りを漉いていくみたい手延べそうめん水にくぐらす

                「すいかと煙草」山階 基

 

とりあげた歌の数がまちまちなのは、他意があってのことではない、

とも言えない(ゴメン)。

出詠歌のいちばん多い濱松哲朗さんは30首。いちばん少ないのは

小原奈実さんの8首だからその点も考慮。(なんて言い訳みたいね。)

でも、皆さんの歌の迫力に押されっぱなし。

いいなぁ、いいなぁと思いつつ拝読。

 

それにしても濱松さんって「アンダーコントロールの欲望」と題して、

山階基さんの歌集『風にあたる』を論じていたけど、力作だった。

ちょっと力を入れすぎの感、なきにしもあらず。

    結局お前はどっちに行きたいねん !

などと、苛立ちを軽口で和らげつつ、しっかり分析・考察しているのは

さすが。

    読者をアンダーコントロールの状態に置くことを優先させたいのだ。

 

    「ストーリーテリング」という評価自体を拒絶する必要はない。

 

なっとく、納得。わたしもそう思う。

山階さんには山階さんの方法論があると思うけど、あまり硬直?しない方が

いい、と、甚だ無責任に思ったりしている。

 

川野芽生さんの「あともどりできない歌」は、優等生の文章らしく

纏まっていた。(褒めているんですよ。)

 

それにしても、濱松さんと廣野さんの第一歌集を早く読みたい。

ことしこそ、読ませてください。

 

                      2019年11月24日発行

         組版・装幀 山階基

         定価・400円   

 

 

     

 

  

  

            

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