« 短歌同人誌「穀物」第6号  | トップページ | 季節の便り(38)新年会 »

2020年1月14日 (火)

歌誌「月光」 2019年12月 №.62

   特集『バリケード・一九六六年二月』刊行五十年

級友樽見への言問いで始まる第一歌集『バリケード・一九六六年二月』

刊行は一九六九年秋、時代は激しく揺れていた。……

 

   樽見、君の肩に霜降れ 眠らざる視界はるけく火群(ほむら)ゆらぐを

巻頭の一首から始まって、人口に膾炙された歌がひしめく。

 

   ここよりは先へゆけないぼくのため左折してゆけ省線電車

   その日からきみみあたらぬ仏文の 二月の花といえヒヤシンス

   二日酔いの無念極まるぼくのためもっと電車よ まじめに走れ

   あじさいは雨に翳りていたるともよしや ひとりのわれとおもうぞ

 

加藤英彦の「粛々と歌い死すべし」を読む。

副題は、『福島泰樹全歌集』以後について

 

   死者を詠う福島が、現実の醜悪さから目を背け死者との甘美な感傷に

   浸らないのはなぜか。それは、福島のなかに死者は生身の存在として

   生きているからであり、その死者たちの生きた口を通して現実の虚妄を

   撃とうとするからである。(略)

 

田中綾の「溌剌たる孤立感」も岡部隆志の「『バリケード・一九六六年

二月』を読む」も、福島泰樹の歌集を十全に論じている。

歌集刊行から50年、「50年経ってまだ孤立していると言えるだろう。」の

岡部隆志の言葉にわたしも共振している。

 

この特集の「Ⅱ 一九七〇年代の論考より」は、垂涎の的。

 

    メッセージーー福島泰樹へ   塚本邦雄

    反骨に伴う気品        中井英夫

    その前夜           寺山修司

    走り続けた十年間       菱川善夫

    非人称のエレジー       磯田光一

    福島泰樹「境界を生きる歌人」 小笠原賢二

 

永久保存版にしたい特集号であった。

 

         2019年12月31日 発行

           定価 1000円

 

思いたって書棚より『遥かなる朋へ』(沖積舎 昭和54年5月)を取り出し、

同時並行しながら読む。この一冊には『バリケード・一九六六年二月』は

勿論だが『エチカ・一九六九年以降』・『晩秋挽歌』・『転調哀傷歌』・

『風に献ず』も収められている370ページの大冊である。この書の解説で

岡井隆は「青年はせっかちである。しかし、福島ほどせっかちに歩み続ける

(駆け続ける)人も多くあるまい。彼はなんと、この九年の間に、六冊の歌集を

出している。(略)」と記している。

 

余談だが、この『遥かなる朋へ』の扉には福島さんの歌1首が太い

万年筆で書かれている。

 

    なにゆえに来たれるなるや六月の花より暗くわれはおりしに

 

どこで所望して書いていただいたのやら?

 

 

 

             

« 短歌同人誌「穀物」第6号  | トップページ | 季節の便り(38)新年会 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事