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2020年3月10日 (火)

歌集『202X』藤原龍一郎 六花書林

真っ赤なカバーの、真田幸治の装幀が斬新である。

ギャング風の4人の黒ずくめの男たち、想像力をかきたてる絵である。

表紙も、見返しの紙も、扉も、スピンまで、真っ赤である。

 

    戦死者は映らぬゆえの清潔な戦争さらば名誉の戦死

    春寒のこのニッポンに数限りなき魍魎が悪徳をなす

    世界終末時計はすすむ酷熱の五輪寒雨の学徒出陣

    東京タワー夕日に映えてそびえたち東京じゅうに電波を飛ばす

    ツイッターなる奔流は日に夜に喜怒哀楽を流し さえずる

    三十八歳の新人として受賞してのち四日後にかの子生れたり

    韻文をわが武器となし見あげれば積乱雲の翳の濃密

    ウタビトの無力は至福金輪際「撃ちてし止まむ」とは詠わぬを

    二〇〇X年某月某日未明なる劫火に首都は燃えていたるや ?

         おそらくは東京五輪おそらくは聖火は戦火となり炎上す

 

悲憤慷慨、義憤、公憤、憤怒、激怒等々のことばが似つかわしい歌の

数々である。時代に対する醒めたまなざしの強さ。

ここまでうたってていいの ?  などと、小心者のわたしは危惧する

愚か者である。

6首目の「三十八歳の新人」のエピソードは、知る人は知っている。

 

    一九八九年九月に私は第一歌集『夢見る頃を過ぎても』を

    上梓した。次の年の現代歌人協会賞の候補にもなった。しかし、

    受賞はならず。(略)

    今思えば幼稚な虚栄心だが、このあと短歌をつくり続けても、

    受賞歌人よりは下にランク付けされるだけだ。それが悔しか

    った。自分も受賞歌人と呼ばれたい。短歌研究新人賞に応募

    すれば、受賞歌人になれるかもしれない。よし、応募しょう!

    と「ラジオ・デイズ」三十首をつくった。そして、運よく受賞

    できた。三十八歳の新人賞。歌集を出した翌年の受賞。

    これは珍しがられた。(略)

 

 

この一文は、歌集の前半の方に収められている。

努力の人、執念の人でもあろう。

 

そして、思うのは、昨年から今年にかけての動静は注視するに

値する。『藤原月彦全句集』(六花書林)、秦夕美との共著『夕月譜』

(ふらんす堂)を上梓している。

 

 

 

          2020年3月11日

           2500円+税

 

 

 

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