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2020年4月 6日 (月)

歌集『ヒアシンスハウス』林 和子 六花書林

前歌集『カスターニェンの木』から20年を経て編まれた著者の

第三歌集。「晶」同人。

 

浦和の別所沼公園のほとりに、五坪ほどの木造ハウス

「ヒアシンスハウス」が建っている。その守りびとの一人でも

ある著者。24歳でこの世を去った立原道造の夢のハウスである。

 

   あずさゆみ春のわた雲ひつじ雲その下をゆく痩身のひと

   南部風鈴の音色すみたり筋雲はかがやき離れまた寄りてゆく

   まぼろしのようなる約束愉しけれ雲ほころびて光こぼせり

   いち早く春は沼辺にやってくる水のおもてに水鳥の影

   沼辺には葦がそよいでいるだろうちぎれ雲浮き春さきの風邪

   遅咲きの隅田の花火ほめらるる通りすがりのアルトの声に

   東大寺戒壇院の石段を濡らして静かに春の雪降る

   野の花のようなるわれら囀りに耳かたむけて雲をまたいで

   信濃路は大いなる眠りに包まれて頬杖をつく石のみほとけ

   いつかわれは秋津となって飛ぶだろうサッカー場を川のほとりを

 

10首選んだら、5首も「雲」の歌になってしまった。

立原道造の詩のように清冽な歌が並ぶ。絵でいえば淡彩画のような。

今のわたしはこのような歌に心が癒やされる。

高原を歩く道造をまぼろしに描く1首目。

6首目の「隅田の花火」は、あじさいの名前。わたしの大好きな品種である。

どのページを開いても、爽やかな風と、雲と、そして、沼辺の草木が目に浮かぶ。

 

   ヒアシンスハウスの外は雨となり鳥の図鑑を棚にさがす子

 

「沼へ向く第三角窓」のあるヒアシンスハウスへ行ってみたい。

いや、行かねば、行きたい、と思うけど、いつになることやら…

 

    夢みたものは ひとつの愛

    ねがったものは ひとつの幸福

    それらはすべてここに ある と

       「X  夢みたものは」  立原道造

 

        

                              帯  小林 幸子 

         2020年3月28日 初版発行

             2500円+税

           

 

 

 

 

 

 

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