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2020年5月 4日 (月)

『母の螢』寺山はつ 新書館

1983年5月4日に亡くなった寺山修司の母親・寺山はつの綴った

副題「寺山修司のいる風景」。

47歳で没した寺山修司、その誕生から幼少の頃、そして、亡くなる

までの日々を綴っている。

 

     あるとき、私はたずねました。

    「修ちゃんはどうして、何にでも母を使うの ? もしかして修ちゃんに

     とって、私の存在がとても負担になっているのですか ?  それともひどく

     けむたい存在であるとか、貴方の気を重くしているとか。何か理由が

     あるの ? 」と。

 

それに対して、寺山修司の「男女の愛情と親子の愛情」について、「ぼくは男女の

愛情というものは、あまり感動しない。」と答えている。そして「悪い母であれ、

良い母であれ、子にもつ愛情はつねに純粋で感動的だ。だから、いろんなドラマが

生まれるんだ。母というものは、無限のドラマなんだよ」

 

    渋谷の「109」の八階で、しゃぶしゃぶを食べました。二人で、

    いろいろしんみり話し合いました。その日はとても素直でやさしく、

    タレのお皿に修ちゃんのシャツの袖口が入るので、私が袖をまくり

    上げてやると、じっとしてまくり上げるのを見ているのです。

    食事を終えて外へ出ると、「これから、人に会うから一人で帰りなさい。

    あと二日したら帰るからね」とニコニコして、手をふって私と反対

    方向へ行きました。

 

その後に起こったこと、それは信じたくもない〈死〉であった。

 

    「109」の前で、ニコニコ手をふって別れるとき、あと二日で帰ると

    約束したのです。私は修ちゃんの約束だけを信じています。

 

    

     

    〈解説〉母の語る寺山修司は終始魅力的であった     山田太一

        鳴かぬ螢が身を焦がすーー自立した「母の文学」 松田 修

 

              1985年2月15日 初版発行

                 定価  1300円

 

 

 

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