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2020年5月 5日 (火)

大田美和思考集『世界の果てまでも』 北冬舎

歌人であり、英文学の教師・研究者でもある大田美和の思考集[エッセイ]。

 

    Ⅰ アジアへ

    Ⅱ 日本の短歌へ

    Ⅲ ヨーロッパへ

    Ⅳ 表現へ

    Ⅴ わたしへ

 

のⅤ章からなり、私が先ず最初に読んだのはⅤ章の「両姓併記パスポート獲得

記」。「選択的夫婦別姓法案」に注目してきた私としては、パスポートに通称

や旧姓併記が可能なものなのかどうか、そして著者はどのような経過・手続き

をとったのかということが知りたかった。

書評や対談などの仕事を通称の〈大田美和〉で通し、職場でも学会でも十年以上

通称でやってきている著者にとって、英国での学会出張もその通称のパスポート

がほしかったのだ。「今の日本の法律では、〈大田美和〉という人は存在しない

んですよ」と、窓口の人に言われながらも、よくぞ粘って獲得することができた

ものだと、喝采を送りたい。(これが書かれたのは10年以上も前のことなので、

現在はもっと自由になっていると思うが…)

 

この書は295ページから成り、前記したようにさまざまな著者の思考が綴られて

いる。Ⅱ章の「日本の短歌へ」の中の小見出し「短歌は詩であり、芸術である、

というあたりまえの事実について」では、短歌の実作者でもある歌人の著者の

疑問が、3点あげられ、思考している。

 

    歌人は何をめざすべきなのか。それは短歌の達人になることではなく、

    日本語の達人になることである。ひいては言葉の達人になることだと

    思う。(略)

 

    他者に心を開くこと。精神を解放すること。それは、芸術の最大の恩恵

    である。さらに、他者に心を開くことは、多様化する現代社会で、芸術

    家以外のすべての人々に求められることだろう。(略)

 

 

それにしても、妹から「お姉ちゃんは「極左」のフェミニストだと思っていたのに、

フツーに結婚するのね」と非難されたエピソードは面白い。半分当っていて、ほん

とうは根本的な間違いなのだ。フェミニストと結婚を同列に論じるほうが可笑しい。

フェミニスト=非婚者 などという数式は無い筈。(笑)

 

     一人一人の人間が自分の生きたいように人生を生きるために、因習を

     取り払い、個人の選択の自由を保障するものとしてフェミニズムは

     あるのだと思います。       (著者の友人の手紙) より

 

STAY HOMEが続くので、恰好の書となった1冊。

 

 

           2020年4月30日 初版発行

             2500円+税

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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