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2020年8月

2020年8月29日 (土)

映画「糸」監督・瀬々敬久

中島みゆきの「糸」から構想を得た映画。

いまもっとも〈旬〉な俳優・菅田将暉と小松菜奈が共演。

 

平成元年生まれの漣(菅田)と葵(小松)の18年に及ぶ恋の物語。

中島みゆきの「縦の糸はあなた 横の糸はわたし」を思わせる紆余曲折が

仕組まれている。

 

この映画は北海道の富良野・美瑛が舞台でもあり、それも楽しみだった。

何より菅田将暉がいい。どのような役でもその役を見事に演じる菅田に魅了される。

 

そして、意外だったのは斎藤工。沖縄での斎藤のやや崩れた感じは素敵だった。

 

 

 

 

 

 

2020年8月27日 (木)

『竜骨(キール)もて』 永田淳歌集 砂子屋書房

令和三十六歌仙 5

2007年から2014年までの作品499首を収めた著者の第三歌集。

 

    河骨や月を包みいし雲はいま深泥池を西に過ぎれる

    街灯のなき路地裏を良夜なり土塀に影をうつしゆく猫

    刈り込まれ立方体に咲く連翹その黄のほとりを春の水ゆく

    夏至の日の瓢箪崩山(ひょうたんくずれやま)静かなり積乱雲の大きなる影

    霧の濃き碓氷峠の車道わき標高千mの標識のたつ

    夜の更けをあかく膨れて右の肩傾がせておりベテルギウスは

    わがことのようにもやがて思おえて毛先のかたき歯ブラシを選る

    そうやっていつまでも浮いてるがいい バウを南へ奔りはじめつ

                          バウ(bow)=舳先

    戻りたるゲラの年譜に一行の享年の日を入れねばならぬ

    ミゾソバの花扱きつつ才能を羨むのはもうやめようよ

 

歌集前半の写生の歌に「おおっ」となった。

あとがきによると「しばらくは叙景歌しか作らないなどと公言していた」らしい。

淳さんと叙景歌、とは想像もしていなかった。

しかし、あげた歌の①から⑥まで全て叙景歌になってしまったのも著者の作戦通りか ?

その叙景歌が実に良い。たとえば本誌34ページから35ページにかけての5首はすべて

とりあげたいくらいだった。その中から猫好きのわたしとしては2首目を選んだ。

 

あげた9首目の連作は小高賢氏のことを詠んでいる。

『シリーズ牧水賞の歌人たち 小高賢』の最終校が届いたのは小高氏の死の前日だったこと。

そのゲラの年譜に一行の享年の日を入れねばならなかったことの口惜しさが伝わってくる。

 

8首目の「バウ」は、舳先と註がある。

歌集題になった「竜骨(キール)」も船の用語か?

 

           極北を目指す逸りの竜骨(キール)もて70mph(マイル)に水をわけゆく

 

なんだか志が込められたような歌集題である。

堅実な、すぐれた技量の一集ではないだろうか。

 

 

            塔21世紀叢書第371篇

            2020年7月1日初版発行

              3000円+税

 

 

 

    

 

2020年8月26日 (水)

歌集『ひどいどしゃぶり』谷岡亜紀 ながらみ書房

前歌集『風のファド』に続く第五歌集。「心の花」所属。

 

    長い旅をしていた 春の夢醒めて昨日と違う朝を始める

    許されるように目覚めて余命約二十年なるわれか 水汲む

    屋上のオープンカフェに月待てり春のスープに匙を沈めて

    苦しみと感謝が多分まだ足りない 酔い覚め今朝も「ひどいどしゃぶり」

    噴水が凍っていたな あなたにもおれにも等しく時は過ぎゆく

    これからは晩年と決めトラ猫よ流れる雲を見上げているのか

    いま持てる幸福の数かぞえつつ光の国から来る人を待つ

    記憶のみ歳とらざるを悲しみていま蝋燭に火を点したり

    わたくしは一管の笛 絶食を七日続けた朝に思いぬ

    心とは光の渚 その人が振り向くときにふと翳りたる

 

歌を選びながら思ったこと、上手に年齢を重ねて来たことをしみじみと味わっている。

谷岡さんもすでに還暦を迎えたのか。

 

1首目、「長い旅をしていた」に実感がこもる。

2首目、「余命約二十年」ということは、80歳までは生きるおつもりのよう。

4首目、「苦しみと感謝」をもっとしなければと思っているのだろうか。

    タイトルになった歌でもあるが「ひどいどしゃぶり」は、現風景というより

    頭の中そのもののようにも思える。

5首目、記憶の再現のような、凍っていた噴水。思えばあれから歳月は過ぎ…

6首目、「これからは晩年」と決めているのは作者自身でもあろう。

7首目、今在ることへの肯定。現状を肯定できることは幸せなことだ。

    個人的にはこの歌がいちばん好き。

8首目、そう、記憶は歳をとらない。記憶は記憶として頭の中に刻み付けられているのだ。

 

    記憶は老いず時のみがゆく 簡潔な冬の木立ちに陽が当たりおり

 

歌集題の素っ気なさに比し、作品はとても丁寧に美しく纏められており、何より抒情的な

一集である。

 

              2020年8月1日発行

               2500円+税

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年8月25日 (火)

『ホタルがいるよ』高橋千恵歌集 六花書林

1981年生まれ、「りとむ」所属の第一歌集。

深刻なことを深刻そうにうたうのでなく、深刻な時こそ心をフラットに

して、むしろ、軽みの方へことばを紡いでる歌。

 

            傷つけず傷つけられず傷つかずそれが恋ならそれが淋しい

    大丈夫またがんばるよお母さん悔しいけれど身体は丈夫

    ああここでメールすべきか金星と三日月くらい離れてしまう

    お母さんきゃらぶきだけで充分よたまには呑もうホタルがいるよ

    手を振ってあなたはいつもやってくる南天の実がクスリと笑う

    しばらくは電話をかけてこないでと二十一時の着信〈母〉に

    なぜみんな家族になりたがるんだろ柿の若葉の露に触れつつ

    如意寺から六つ目の鐘鳴り渡り『山谷集』に栞を挟む

    真ん中のカツを一切れもらいたり師走半ばの土曜の昼に

    交差する飛行機雲を眺めつつ添い遂げるっていいものかしら

 

1首目、いまどきの若者たちは「傷つく」のがイヤだそうな。

    たから、友人に忠告したりケンカを振っかけたりしない。

    ほどほどの距離を保っての友達関係か。しかして、恋人たちもなのか。

    作者はそんな〈恋〉なら、淋しいと感じている。

 

2首目は跋文で三枝昻之氏も書いていたが「悔しいくらい」の4句目が実にいい。

 

4首目は歌集題になった歌。帰省した娘のためにお酒のアテをせっせと作って

   いる母親なのだろう。母娘の交わす言葉のニュアンスまで伝わってきそうだ。

 

5首目の歌を読んだ時、発作的に浮かんできたのは山崎方代の歌だった。

   「一度だけ本当の恋がありました南天の実が知っております」

   高橋さんの歌は、方代の歌と相性がいいかもしれない ?

 

8首目、三枝さんとの出会いは土屋文明記念館ということだし、郷里の大歌人

   土屋文明の歌集を読む殊勝さが好ましい。

 

三十代女性のまぎれもないひりひりした感情がオブラートにくるんでうたわれている。

わたしがぐだぐだ感想を綴るより、とにかく歌集を愉しんでほしい。

そして、味わってほしい。

 

補足だが、このブログでは取り上げなかったが、歯科衛生士という仕事を持つ高橋さんの働く

現場の歌は臨場感がある。今後はもっともっと詠まれてもいいだろう。

いや、詠むべきかもしれない。(なんて、えらそうな物言いになってごめんなさい。)

 

 

 

           跋   カレーでも食べにおいでよ

               ー高橋千恵『ホタルがいるよ』を楽しみながら 

                          三枝昻之

           2020年8月25日 初版発行

             定価 2000円+税

 

 

 

           

 

    

2020年8月23日 (日)

季節の便り(54) ベランダの緑

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       ゴーヤちらほら 

 

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       葭簀の前のグリーン

 

 

 

 

 

 

2020年8月20日 (木)

季節の便り(53) 日輪を隠す日光日日草   池田澄子

昨日の久留米市の気温は37・6℃だった。

暑かった。二番街のハンギングバスケットの日日草はそれでも逞しく、

しかも可憐に咲いていた。

 

       202085

         日輪を隠す日光日日草  池田澄子(『ゆく船』所収)

 

漢字の「日」が4つ並んでいる俳句。

太陽の在処まで隠すような強烈な日光。

日日草の異名は、そのひぐさ・四時草(しじか)とも呼ばれている。

 

池田澄子さんの句集『思ってます』を寝しなに開く。

 

          佳い人ほど早く死ぬんですなんて素麺

          夏掛や逢いたいお化けは来てくれず

 

「わが晩年などと気取りてあぁ暑し」の池田澄子さんの句が身に沁む。

 

 

 

 

 

2020年8月19日 (水)

短歌で号泣できるか?  『現代詩手帖』2005年11月号

『現代詩手帖』2005年11月号は、

        【特集】 岡井隆 来たるべき詩歌 

 

だった。読み返していると、この号には多くの歌人の方々が執筆している。

その中で黒瀬珂瀾さんが1首鑑賞として岡井隆氏の下記の歌について執筆。

題して「劇場で離別しうるか」。

 

    三たびまで煮沸されたる液体のやうなこころぞ離別し終る

                   『ヴォツエック/海と陸』

 

    「短歌で号泣できるか?」かつて、この詰問を提示したのは作家・高橋和巳で

    あった。もし、この問いに向かうことがあれば、僕は「短歌では号泣できない。

    しかし、心の涙を静かに絞ることはできる」と応えたい。

 

黒瀬さんの冒頭のことばに引き寄せられ、高橋和巳のどの書に、いつ、どのような状況(状態)で

書かれたのか、発せられたのか、調べようと試みたのだが、浅学のわたしには御手上げの状態。

それは兎も角、そのことよりも黒瀬さんの応えのことばにやっぱりそうか、そうだろうな、

と、納得?したい。

 

そして、この黒瀬さんの本誌分1ページの鑑賞に魅入られた。

 

     (略)それにしても、「三たびまで煮沸されたる液体」とは、何とやるせない諦念を

      込めた表現だろうか。「三度目の離婚」を暗示しつつ、オペラの主人公や液体に仮託

      して変容し続ける主体の姿を描く。ここには詩の冀求と単純な叫びに一線を画す矜持が

      ある。

       スキャンダラスな生を自覚する岡井だからこそこれらの詩語を選択しえた、という

      側面はある。しかし、強烈な「事実」を背景に有しながらも、「吾」を容れる劇空間を

      より重視することで、岡井は「新たな境涯詠」を模索しているのではないだろうか。

      「劇化」と「事実」の虚実皮膜を歩む、強靭かつ悲痛な詩精神。それに僕はささやかな

      涙を零す。

 

岡井さんの本質を見通す優れた眼力の鑑賞であり、黒瀬さんの文章は複雑なものをわかりやすく

読み手に手渡してくれるようだ。

 

「短歌では号泣できない。しかし、心の涙を静かに絞ることはできる」

のですね。わかりました、肝に銘じます。

 

 

 

 

 

 

      

 

 

2020年8月16日 (日)

季節の便り(52)夜の植物園・動物園

福岡市植物園にサガリバナが咲いているということを知り、観に行った。

 

サガリバナは沖縄の西表島が有名で「サガリバナツアー」などがある。

「一夜限りの幻の花」は、沖縄の梅雨明け後が最も見頃だが、

ことしも観に行くことが出来なかった。

 

夜から咲きはじめて朝には散ってしまうサガリバナ。

「幸運を呼ぶ花」ともいわれている。

幸運はともかくとして、土曜日には21時まで開園しているということで、

一夜限りの花をめざして植物園の温室へ。

 

ところが、なんとしたことか、というより土曜日の夜の園内の人出には

驚いた。植物園と動物園は往き来可能で開放されているため、夜の動物見学の

子どもたちの多さ、賑やかさ。そりゃあ、そうだ。このところの酷暑で、昼間来る

より夕涼みがてらの夜の見学の方が良いだろう。

 

まぁ、それはともかくとして「サガリバナ」に逢って来た。

下記の写真がその「サガリバナ」。

 

         2020815

                 サガリバナ 

 

もう1枚おまけの写真。

         2020815_20200816213001

                セイロンライティア

 

 

温室を出て、歩いていると、森でツクツク法師が鳴いていた。

秋が近づいている。

 

 

 

 

 

 

2020年8月15日 (土)

映画「東京裁判」監督・小林正樹

戦後75年の特別上映「東京裁判」を観ることができた。

4時間37分の上映時間の長さが感じられないほど、迫力のあるものだった。

(途中・休憩あり)

 

 

敗戦国・日本が裁かれたこと。

しかし、それぞれの被告に弁護人が付き、なかでもアメリカ人弁護士は

人権のために奮闘していた。

 

戦争はどうして起きたのか、戦争を回避することはできなかったのか。

日本の軍国主義の歩みを改めて知ることができ、世界情勢などの近代の歴史が

沢山のフイルムによって臨場感をもって迫ってきた。

 

この映画ではじめて天皇陛下の玉音放送を全文・字幕付きで聴くことができた。

更にいえば、新憲法の条文が大きな字幕でスクリーンいっぱいに映しだされた時は

涙が零れた。

 

戦争は絶対あってはならないこと。

そして、改憲はゼッタイあってはならないことだ。

 

この映画を若いひとたちにも観てほしい。

 

(東條英機ら被告人の顔・声・姿すべて実物であるのは裁判記録のフイルムを

 もとに構成されているため)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年8月14日 (金)

小説『そこにはいない男たちについて』井上荒野

「ランティエ」2019年7月号でちょい読みした「そこにはいない男たちについて」の

単行本を読了。(当ブログでは2019年6月16日にちょっと紹介ズミ。)

 

料理教室を主宰している実日子(みかこ)は、1年半年前、夫を突然亡くした。

実日子の料理教室の生徒・まりは生活を共にしている夫が嫌いである。だが、

別れられない。

 

   実日子先生の夫はいるのだから。生きている間、ずっと彼女のそばにいて、

   だから死んでしまっても、ちゃんといる。どれだけさびしそうに見えても、

   それだけはたしかだ。              「まり」の述懐。

   

   私が忘れないかぎり、あなたはいるのよ。     「実日子」の述懐。

 

夫が大嫌いになったまりの寂寥すさまじい日々の描写。

夫の実家での姪にたいする仕打ち「このくらいのことは私にもできる」には、一読者として

からだが震えた。(ここまで書ける作家、それが井上荒野だろう。)

 

   別れたらそれきりじゃないですか。まだ責め足りないんですよ。

   毎日ネチネチ責めたいんです。           「まり」

 

女の業(ごう)の悲しさ、せつなさ。

そんな中で鍼灸師の青年・勇介の明るさ・健康な精神が救い。

 

   「慣れちゃだめなんですよ、悪いことには」

 

井上荒野さんの心理描写には唸ってしまう。

女のカワイイところも、醜いところも、全てことばにしてしまう。

どこまで進化し続けるのだろう。作家・井上荒野は。

 

 

             2020年7月18日 第一刷発行

             発行所 角川春樹事務所

             定価 1500円+税

 

 

 

 

 

 

 

 

  

    

 

   

2020年8月13日 (木)

季節の便り(51)初盆

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    古川さん、ありがとう ‼  miyoko

 

Photo_20200814001001

      みなさま、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年8月 9日 (日)

「彼方への記憶」-中野修追悼- 恒成美代子編

           202088

 

 

                                86

 

 

                                                        2020年8月13日発行

                 発行者 中野美代子(恒成美代子)

                 制作 (有)花書院

                     〒810-0012   福岡市中央区白金2-9-2

 

 

 

 

 

 

          

 

 

2020年8月 3日 (月)

映画「劇場」行定勲監督

夢を追う青年と、その青年の夢を支え続けるひたむきな女性の恋の物語。

せつなくて、何度も泣いてしまった。

(夢や野望を持っている男に近づく勿れ…と思わぬでもないが…)

 

原作は又吉直樹の小説『劇場』。

永田(山﨑賢人)と、沙希(松岡茉優)の心の揺れが痛いほど伝わってきた。

沙希のアパートに転がり込んだ永田。

それを受け入れ、どんな時でも包み込む沙希。

「ここがいちばん安全」と。

あんなに包容力のある沙希が「もうわたし27歳よ、まわりのみんな結婚してしまった。」

と訴える。

 

それにしても山﨑賢人の髪型・髭面・着こなしは、これ以上ないくらいはまっていた。

そして、松岡茉優の愛らしさは〈天使〉。

〈天使〉が〈神さま〉に……

 

そういえば、あれって思う人が出演していた。

そう、King Gnu の井口理。実年齢よりおじさんに見えたりしたけど(笑)

 

恋愛中のあなた、恋に憧れているあなたに、ゼッタイお勧めの映画。

いや、年齢に関係なく、この映画は心を浄化してくれそう。

 

 

 

 

 

2020年8月 2日 (日)

季節の便り(50)曜白朝顔が各地に咲いて…

わがやの曜白朝顔の種子が各地の家で育ち、花を咲かせている。

本日は、浦さん、立石さん、前田さん、弓削さんちの朝顔を

紹介したい。

そして、わがやの今年の花・2019年の花・2018年に写した花も今一度

掲げてみたい。

 

 

    Photo_20200802081501

       浦さんちの曜白朝顔

 

Photo_20200802081601               

     立石さんちの曜白朝顔

 

Photo_20200802112801

    前田さんちの曜白朝顔

 

Photo_20200802123601

    弓削さんちの曜白朝顔

 

 

 

2020713 

    2020年7月13日撮影  miyoko

 

 

2019

          2019年8月30日撮影   miyoko

 

 

2018910

         2018年9月10日撮影   miyoko

 

 

曜白朝顔は、花の縁を中心に向かっている先が白くなっているのが特徴。

アフリカ系アサガオとマルバアサガオを掛け合わせた後、日本朝顔を

交配させたものらしい。

生育旺盛で午後まで花が開いている。

わがやの種子が受講生の家で広がり、子ども花から、孫花となり、来年は曾孫花と

なって夏を彩ってくれることだろう。

 

 

 

 

   

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