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2020年8月14日 (金)

小説『そこにはいない男たちについて』井上荒野

「ランティエ」2019年7月号でちょい読みした「そこにはいない男たちについて」の

単行本を読了。(当ブログでは2019年6月16日にちょっと紹介ズミ。)

 

料理教室を主宰している実日子(みかこ)は、1年半年前、夫を突然亡くした。

実日子の料理教室の生徒・まりは生活を共にしている夫が嫌いである。だが、

別れられない。

 

   実日子先生の夫はいるのだから。生きている間、ずっと彼女のそばにいて、

   だから死んでしまっても、ちゃんといる。どれだけさびしそうに見えても、

   それだけはたしかだ。              「まり」の述懐。

   

   私が忘れないかぎり、あなたはいるのよ。     「実日子」の述懐。

 

夫が大嫌いになったまりの寂寥すさまじい日々の描写。

夫の実家での姪にたいする仕打ち「このくらいのことは私にもできる」には、一読者として

からだが震えた。(ここまで書ける作家、それが井上荒野だろう。)

 

   別れたらそれきりじゃないですか。まだ責め足りないんですよ。

   毎日ネチネチ責めたいんです。           「まり」

 

女の業(ごう)の悲しさ、せつなさ。

そんな中で鍼灸師の青年・勇介の明るさ・健康な精神が救い。

 

   「慣れちゃだめなんですよ、悪いことには」

 

井上荒野さんの心理描写には唸ってしまう。

女のカワイイところも、醜いところも、全てことばにしてしまう。

どこまで進化し続けるのだろう。作家・井上荒野は。

 

 

             2020年7月18日 第一刷発行

             発行所 角川春樹事務所

             定価 1500円+税

 

 

 

 

 

 

 

 

  

    

 

   

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