『踊り場からの眺め』松村正直 六花書林
2011年から2021年の短歌時評を収めている。
著者は現在、角川書店の『短歌』に「啄木ごっこ」を連載中で、2021年9月号で35回目。
朝日新聞紙上の短歌時評は読んだものもあるにはあるが、毎日新聞やその他、
精力的に書き継いできたことが窺える。以下がその内容である。
Ⅰ 時評・評論 (2011・4ー2014・1)
Ⅱ 時評・評論 (2014・1-2016・12)
Ⅲ 「毎日新聞」短歌時評 (2014・4-2018・3)
Ⅳ 時評・評論 (2017・1ー2018・9)
Ⅴ 「朝日新聞」短歌時評 (2019・4ー2021・3)
松村さんの時評はブレナイところがいい。
書きづらい文章もあったと思うが右顧左眄することなく、書かれていることに著者の
誠実さを感じる。その中で「宣伝と時評」では、歯に衣着せずズバリと書いている。
(略) 歌集が一般の読者にも広く売れることは、多くの歌人の願いである。
けれども、そのために時評の客観性や中立性が失われることがあっては
ならないだろう。読者に対するフェアな姿勢を忘れてしまえば‥‥
(「現代短歌新聞」15・6)
と、いったことを時評子としては肝に銘じているのだろう。
従っておのずと著者自身の「短歌観」も披瀝することになる。
(略) 歌人は「古い」と言われることをひどく恐れる。「新しい」が褒め言葉の
ように使われることも多い。けれども、新製品の開発のように新しさを競う分野とは
違って、短歌はもともと和歌以来数百年の歴史を持つ伝統詩形である。万葉集の歌を
読んで「古いからダメだ」などと言う人はいないだろう。目先の新しさのみをもてはやす
風潮は、そろそろ終わりにしたい。
「新しい短歌 ? 」 毎日新聞 短歌時評 (16・8)
どこから読んでもいいし、関心のあるタイトルを探して読んでもいい。
平易な文章なのでとっつき易い。
巻末に「人名索引」を付けているのも親切。
2021年9月16日 初版発行
2500円+税
露草(ツユクサ)
妹宅の紫紺野牡丹(シコンノボタン)
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