« 季節の便り(94) 咲き続ける曜白朝顔と、そして‥‥ | トップページ | 歌集『ようこそ明日』 春日真木子  角川書店 »

2021年9月16日 (木)

『踊り場からの眺め』松村正直 六花書林

2011年から2021年の短歌時評を収めている。

著者は現在、角川書店の『短歌』に「啄木ごっこ」を連載中で、2021年9月号で35回目。

 

朝日新聞紙上の短歌時評は読んだものもあるにはあるが、毎日新聞やその他、

精力的に書き継いできたことが窺える。以下がその内容である。

 

      Ⅰ 時評・評論 (2011・4ー2014・1)

               Ⅱ 時評・評論 (2014・1-2016・12)

               Ⅲ 「毎日新聞」短歌時評 (2014・4-2018・3)

               Ⅳ 時評・評論 (2017・1ー2018・9)

               Ⅴ 「朝日新聞」短歌時評 (2019・4ー2021・3)

 

松村さんの時評はブレナイところがいい。

書きづらい文章もあったと思うが右顧左眄することなく、書かれていることに著者の

誠実さを感じる。その中で「宣伝と時評」では、歯に衣着せずズバリと書いている。

 

     (略) 歌集が一般の読者にも広く売れることは、多くの歌人の願いである。

     けれども、そのために時評の客観性や中立性が失われることがあっては

     ならないだろう。読者に対するフェアな姿勢を忘れてしまえば‥‥

                                                                  (「現代短歌新聞」15・6)

 

と、いったことを時評子としては肝に銘じているのだろう。

従っておのずと著者自身の「短歌観」も披瀝することになる。

 

     (略) 歌人は「古い」と言われることをひどく恐れる。「新しい」が褒め言葉の

     ように使われることも多い。けれども、新製品の開発のように新しさを競う分野とは

     違って、短歌はもともと和歌以来数百年の歴史を持つ伝統詩形である。万葉集の歌を

     読んで「古いからダメだ」などと言う人はいないだろう。目先の新しさのみをもてはやす

     風潮は、そろそろ終わりにしたい。

                 「新しい短歌 ? 」 毎日新聞 短歌時評     (16・8)

 

どこから読んでもいいし、関心のあるタイトルを探して読んでもいい。

平易な文章なのでとっつき易い。

巻末に「人名索引」を付けているのも親切。

 

            2021年9月16日 初版発行

                2500円+税

 

     Photo_20210915150301

             露草(ツユクサ)

 

     Photo_20210915150302

        妹宅の紫紺野牡丹(シコンノボタン)

      

     

 

     

 

 

« 季節の便り(94) 咲き続ける曜白朝顔と、そして‥‥ | トップページ | 歌集『ようこそ明日』 春日真木子  角川書店 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事